函館銀座通り・レトロ建築コレクション(その３、十字街電停前の梅津商店)

◆函館市電・十字街電停前の梅津商店
　　・・・・・銀座通り入り口に建つ洋風老舗商店


　今回、函館銀座通りレトロ建築コレクションとして取り上げさせていただくのは、十字街電停前に建つ食料品を取り扱う梅津商店。
　この梅津商店、市電通りと銀座通りが交わる角地の好立地に位置していることもあり、地味だが真面目な印象を受ける風格ある洋風建築の姿を覚えている方も沢山いらっしゃるのではないかと思う。
　また前２回に紹介させていただいた旧ホテル中央荘 、旧箕浦公証役場は大正１０(１９２１)年４月に起きた函館大火後に建設されたものだが、こちらは昭和９(１９３４)年３月に起きた函館大火後に施工されたもの。大正１０年の函館大火後、梅津商店は木造モルタル塗り２階建ての商店を建設したようだが、昭和９年の大火で以前の店舗が焼失してしまったため、その直後新たに建てられたのが現在の店舗との事だ。

　私はいつも十字街電停前(銀座通り入り口)の梅津商店を見るたび、「堅実ながらお洒落な建築」という印象を抱いてしまう。大正中期から昭和９年の大火前までに、函館で建てらたコンクリート製をはじめとする耐火構造の商店建築のような派手さはないものの、少し洒落ているのだがしっかり地に足が付いた感じで、その質素で落ち着きのある佇まいは一種の風格すら漂わせているように思えてくるのだ。
　函館に訪れるたび、梅津商店を通り過ぎるさい年代物のガラスの引き戸越しに店内を覗くと、店内は和風商家のような土間が広がっており、外観の洋風のイメージとはまた違った印象を受ける。このような業種の商店というと弁天町の太刀川家店舗(米穀店)や、末広町の深谷米穀店(現：ラ・コンチャ)など、洋風ながらも少し古風な建物を私は連想してしまうのだが、梅津商店の当時の家主は外観を洋風のお洒落なデザインにする事で、銀座通りという当時のモダンストリートに華を添えようと考えてたのではないかと私は推測する。
　また先日に函館在住の知り合いの方から、昭和９年大火で焼失してしまった以前の店舗の写真を見せていただいたのだが、現在の店舗と似たデザインになっており正直驚いた。当時の店主は昭和９年の大火で焼失した店舗に対して、強い思い入れがあったのではないかとも想像してしまった。
　そして現在の梅津商店、もう一つの特徴としては木造モルタル塗りの〔準防火建築〕ということ。木造と言われないと分からない程に、建物外には完璧にモルタルが塗ってある。恐らく食料品を取り扱う商売柄、木へのこだわりがあったのだろうか、ちよっとした事なのだが一つの建物を見るたび色々と新たな興味が湧いてきてしまう。

　ここ１０年ほど、梅津商店が建つ十字街電停の近辺はすっかり様変わりしてしまったが、かっての函館の雰囲気を伝える貴重な建物だと思う。電車を降りて進行方向後ろ側に進めば、真面目な老舗商店の建築と銀座通りの大正モダンな建築群が待っている。時間はかからない、是非とも一度かっての函館のモダンストリートを訪れていただきたいものだ・・・・・。

◆梅津商店
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工:昭和９(１９２１)年以降
　◎構造：木造モルタル塗り２階建て
　◎所在地：函館市末広町８‐８

◆梅津商店正面部分

市電通りと銀座通りが交わる部分。ここの窓のみがアーチ窓になっている。
右から左までずらりと取扱い商品が案内されている訳だ・・・・・。

◆十字街電停方面から

建物内の店舗部分は土間のある和風商家ふうの造り。
なおガラス越しに向いに建つ旧ホテル中央荘の姿も。湾曲した昔ながらのガラス窓が梅津商店の歴史を物語る。
◆梅津商店の看板

◆銀座通りから

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★撮影・・・・・２００１年１１月、２００２年６月、２００４年１月、２００８年７月、２００９年３月・6月