函館市立高盛小学校(函館の建築紹介)

◆函館市立高盛小学校・校舎
　　・・・・建築家・小南武一設計作品探訪(その３)


　先日から始めさせていただいた、昭和９年の函館大火後に同市内に建設された復興小・中学校紹介。この日は函館市立弥生小学校(昭和１３年築)を皮切りに、青柳小学校(昭和１０年築)、的場中学校(昭和１１年築)と巡ったあと、最後に訪ねたのが今回紹介する高盛小学校(昭和１０年築)だった。

　この高盛小学校はこれまで紹介してきたように、昭和９年の大火後に復興計画の一環として建設された鉄筋コンクリート製の公立小学校舎５校のうちの一つで、青柳小と共に最初に竣工した校舎。設計はこれまで紹介してきた復興小学校と同じく、小南武一(１８９７～１９７６)が課長を務める函館市建築課が担当した。

　また昭和１０年から１２年にかけて、函館市は火災発生時の緊急避難場所を考えてか、昭和９年大火時の焼失区域に１キロから５００メートルくらいの間隔で、復興小学校を建設。この高盛小学校も、前回紹介した的場中学校より数百メートル離れた場所に建てられている。現在、大森小学校と東川小学校は現存しないが、的場中学校の記事で紹介したグリーン・ベルトをはじめ、昭和９年の函館大火後、同市では実に綿密な区画整理がおこなわれている。今回の函館訪問時、昭和９年の大火後に建設された復興小学校を巡りながら、今から７０年前にこの街の復興に携わった人達の熱意をひしひしと感じてしまった。

　そして昭和９年の大火後、函館復興の象徴として建てられたのが、これらの復興小学校建築群であったと私は考える。復興小学校の建設にあたり、設計者の小南武一も平面計画だけではなく、外観のデザインにも配慮していたようで、現存する小南設計による復興小学校を見ると色々な遊び心が感じられる。
　冒頭に掲載した高盛小学校の玄関側を撮影した写真をご覧いただくと、玄関上にはアールデコ風のワンポイントの装飾が。少し作風は異なるが、小南が昭和９年の大火後に設計を手掛けた函館市公民館(昭和８年)などを思い出してしまう洒落たデザインである。小南は自らの設計作品に最新の建築デザインを前面に出す建築家ではなかったが、こういう懐の深さを伺わせるような芸を見せてくれる。小南の存在こそあまり知られていないが、関根要太郎や木田保造と同じく函館が育てた偉大な建築家の一人であると私は考える。

　また高盛小学校を見るたびに関心させられるのが、メンテナンスの良さ。予備知識なしで見たら築３０年くらいの校舎と思えるほど、綺麗に修繕されている。

　高盛小をはじめとする、函館の復興小学校の屋根カバーは近年取り付けられたものだそうだが、既存の校舎のイメージを台無しにすることもなく見事に調和しているのだ。この屋根カバーを設置した人達の、先人たちが作った建築に対する敬意が感じられるような思いやりが感じられる補修だと私は思う。

　何気ない普段の生活の中に、このような歴史ある素晴らしい建築があり、現役の校舎として使われているというのは、他所の土地に住む私にとってはとても羨ましく思えてきてまう・・・・。

◆函館市立高盛小学校(旧大森尋常高等小学校)校舎
　◎設計：小南武一(函館市建築課)
　◎施工：森川組
　◎竣工：昭和１０(1935)１２月
　◎構造：鉄筋コンクリート３階建て
　◎所在地：函館市高盛町１７

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●高盛小学校舎の竣工を伝える当時の新聞記事　〔出典：５〕

高盛小学校は竣工当初、大森小学校という名称で発足。竣工の翌年にあたる昭和１１年に高盛小学校という改称されている。またこの校舎が竣工して間もなくは、昭和９年の大火で市内の大半が焼失してしまった為、一時的に他校もこの校舎を間借りし、同校には２６００人もの児童が通っていたという。


●校舎北側(上)と南側(下)

校舎南側の階段室には小南作品の十八番である丸窓が。
●校舎西側より体育館を見る

高盛小学校も片仮名の『コ』の字型の校舎に、あいた部分にコンクリート製の体育館を置くという配置。昭和９年大火後に建設された各小中学校で体育館の置かれている方角が違っているのが面白い。恐らく火災発生時の風向きなどを考慮したのではないかと考えられる。こちらが東側に設置された体育館。

※この建物は現役の校舎として使われています。見学に際してはくれぐれもマナーを守った行動をお願いいたします。
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★既に取り壊された昭和９年函館大火後に建設された復興小学校
◆函館市立東川小学校(昭和１１年９月竣工、設計：小南武一)　〔出典：６〕

昭和９年の函館大火後、青柳小・高盛小に次いで建設された鉄筋コンクリート製の復興小学校舎。函館市の東川町、大森浜沿いにこの校舎はあった。この東川小も函館市建築課長の小南武一が設計を担当しているが、高盛小学校に共通するデザインが採用されている。
また戦後、東川小は文部省からモデルスクールに指定されるなど、注目を集める教育方針をとっていたようだが、児童数の減少により数年前に廃校。その後、地元の方による旧校舎解体の反対活動がおこなわれたが、残念ながらそれらの活動は叶わず解体されてしまった。現在、東川小跡地は空き地のままである・・・・。

◆護国神社坂上より見た解体前の東川小学校

★１９９９年８月撮影
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〔出典：５〕・・・・・『函館新聞』昭和１０年１２月１日記事より
〔出典：６〕・・・・・『　　〃　　 』昭和１１年８月２９日記事より
※撮影・・・・・２００８年６月、2009年6月(差し替え)