秩父の秩父館(建築家・関根要太郎の故郷を訪ねる)その２

◆秩父の秩父館(ほっとすぽっと秩父館)
　　・・・・地元有志の手により再生活用された明治１２年築の和風旅館建築


　前回に引き続き、今回も埼玉県秩父市に昨年の暮れオープンした〔ほっとすぽっと秩父館、旧秩父館〕を紹介させていただきたい。ちなみにこの秩父館は、大正から昭和初期にモダンな作風を得意として活躍した建築家・関根要太郎(1889～1959)の実家でもある。

　秩父館は秩父と江戸、甲州、上州を結ぶ街道〔秩父往還〕沿いに、明治12年ころ建てられた旅籠で、十数年前まで商人宿として営業を続けていた。その後、旅館業は休業していたが、近年に地元町内会の企画により建物一部を観光客・市民向けのスペースとして再活用する事が決定。地元出身の建築家・根岸俊雄氏の監修により、往年の雰囲気をイメージした改修工事がおこなわれ、昨年１２月にリュニューアルオープンの運びとなった。

　私も今年５月に、久しぶりに秩父館へお邪魔したが、古くから使われていた建物の部材・家具・調度品を最大限に活かした建物内外は、新たな命を与えられ、とても輝いて見えた。また今回の建物改修に関しては、旅館時代の間取りに近い形に復元されているのが特徴。昔の雰囲気を大切にしようと意気込みが伺え、とても好感の持てるものである。
　そういう事でこの項では、秩父館の外観、玄関廻りの写真を幾つか紹介させていただきたい。

◆秩父館の平面図(関根要太郎作成、『日本建築士』昭和１１年１０月号より)

建築家・関根要太郎が秩父に帰郷したさい、取材・作成した秩父館の平面図。
図面下が秩父往還沿いの建物正面にあたる。また図面下の道路側の一階・二階部分が、このたび公開された。
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★建物正面

改修前は一階部分はスチールサッシが取り付けられていたが、今回の改修では木調ふうのものに取り替えられた。また、この前にある道が〔秩父往還〕。この建物は明治期より多くの旅人を見送っていったのだろう・・・・。
★玄関上の表札

表札の数々が秩父館の歴史を物語る。庇を支える持ち送りも立派だ・・・・。
★秩父館の勝手口

こちらは家人専用の勝手口。また屋敷内に古くからの稲荷が祭られており(こちらは非公開)、１２月の秩父夜祭り、７月の川瀬祭り(子供祭り)で出される山車の何台かは、この方向に礼をする風習が残っているという。
★建物正面の廊下

玄関右手にあるのが、こちらの廊下。再生後は地元の野菜などの直販所として使われている。

★玄関部分より見た土間

この建物の最大の特徴が、天井の梁。この建物の部材は、近くにあった豪農の屋敷の部材を譲り受けたものだそうで、風格すら漂わせる。また土間の一部は、戦後になり部屋増築のため埋められていたが、今回の改修に伴いもとの広さに復元された。
★金庫

玄関右手の部屋は帳場だったので、ご覧のような重厚な金庫が置かれている。関根家の方によると大正以前には置かれていたものだという。ちなみに長年『開かずの金庫』なのだそう・・・・。

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★撮影・・・・・２００８年５月、2009年7月(再撮影、一部差し替え)