私と函館、そして建築家・関根要太郎について・１

◆私と函館、そして建築家・関根要太郎について
※写真は函館市元町にある関根要太郎・山中節治兄弟設計の旧亀井邸(大正１０年築)


前回、お知らせした通り今回は私と函館、そして函館で知った建築家の故・関根要太郎氏に興味を抱くようになった経緯を紹介させて頂きたいと思います。
先日より多くの方からコメントを頂戴し、再開記事をどのようなものにするか迷いました。このような記事は、私のブログにご訪問していただいている多くの方の関心(共感)を得られないかも知れませんが、今回はこのような形で投稿させていただきました。
次回からは函館の案内、また関根要太郎の函館へ来るまでの活動を紹介させていただきたいと思います。

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　　 １・函館との出会い

函館へはじめて訪れたのは１０年前のこと。当時私は学校を卒業し就職してまもない頃で、連休がとれると２～３日程度の小旅行をたまにしていた。どうして函館に行ったかというと、いつも京都や奈良など関西方面へ訪れてばかりいたので、高校の修学旅行でしか訪れた事がなかった北海道へ行ってみようかなという軽い気持ちだったと思う。あと北海道でも札幌や小樽などの他の都市ではなく函館にしたのかというと、このころ函館を舞台にした辻仁成氏の小説〔海峡の光〕がちょっとしたブームになっていたので、『ならば見てみるか』という感覚だった。

その当時、私の函館に関する基礎知識は、函館山からの夜景・五稜郭・朝市程度のものだったが、かえって観光に関する予習していなかった事が自分なりの函館の魅力を見出せたのではないかと今にしてみれば思う。あの砂州の独特な地形に、荒々しい岩が美しい立待岬、高台に上れば波打つ津軽海峡と穏やかな函館湾が同時に望め、海へ滑り台のようにまっすぐ伸びる坂道・・・・など、今まで見た事がない美しい町の地形に感動した。そして当時近代建築に関心を持つようになっていた私は、この美しい地形の町に残る数多くの歴史的建造物に魅了されてしまったのである。
この頃(今もそうだが)、函館の町を歩いて面白いと思ったのは、町が凝縮されていること。函館にお住まいの方や実際に訪れた事がある方なら分かっていただけるだろうが、ハリストス正教会・旧函館区公会堂などの有名どころの歴史的建造物のすぐそばに、２階が洋風下見板張りの洋風で１階が和風の〔擬洋風民家〕が建っていて、その年代物の民家にはごく普通に地元の方が生活されていたり、旧ロシア領事館のある幸坂を下ると、大小の塩辛工場や古びた煉瓦倉庫があったりする。私は坂を上り下りしながら、教会・寺院・官庁・オフィス・倉庫・民家・古びた商店街など、様々な町の風景に出会える函館の町並みが面白くて、カメラ片手にこの町をとことん歩いた。晴れいても綺麗だし、曇りや雪雨でも絵になるという町がここ函館である。
また以前訪れた事があった、横浜や神戸という他の開港都市にはない生活感ある町の営みに、そのような実体験はないものの妙な懐かしさを覚えたものだ。高度成長期以降に生まれた私としては、この函館は〔古くて新しい〕不思議な存在になってしまったのである。

そして私が函館に対する興味が深まっていった頃、北海道新聞社より函館の古建築を紹介した〔函館の建築探訪〕という本が出版され、この書籍をバイブルのようにして年二度程度の函館建築探訪巡りをするようになった私である。この本を通じて、函館という町の魅力に更にのめり込んでいった時期でもあった。しかしこの頃は、関根要太郎については建築探訪の書籍で紹介されている一人の建築家という程度の認識しかなかった・・・・・。

☆２に続く・・・・・

◆元町カトリック教会、以前のステンドグラス、２００２年６月撮影

◆青函連絡船・摩周丸付近より