中国・青島のモダン建築巡り(その3)

◆青島・ドイツ租借時代の旧裁判所(１９１４年築)

中国・山東省の青島(チンタオ)は、１９世紀末より１９１４年に第一世界大戦でドイツが降伏するまで、ドイツの租借地として開発された都市である。
また本国ドイツでは〔ユーゲントシュティル〕という、アールヌーヴォーのドイツ版とも言うべきモダンな建築様式が流行し、ここ青島でもこの時代を象徴するかのような、モダンな建造物が多く建てられる事になった。
このブログの主人公である建築家・関根要太郎(1889～1959)も、大正なかばから昭和初期にかけて〔ユーゲントシュティル〕の作風を取り入れ、日本国内で大活躍している。関根は青島へは訪れた事がないようだが、作風のルーツを探るべく２０世紀初頭に青島で建てられた〔ユーゲントシュティル〕を紹介させて頂いた。この項では１９１０年以降に青島に建てられた、モダン路線を更に突き進んだ作品を紹介したい。

◆青島・ドイツ租借地時代の旧裁判所(１９１４年築)

上の二点の写真の建物はドイツ時代、裁判所として建てられたもの。
但し、この建物が竣工した年に在青島のドイツ軍は、日本軍の攻撃に降伏してしまうので、実質的な使用期間は短かったようだ。
ドイツ人建築家のハンス・フィットカウ〔Hans　Fittkau〕の設計によるこの建物は、直線的なデザインと建物隅部の丸味を帯びたデザインの対比により、見る角度により違った印象を受ける。

◆ドイツ租借地時代のオフィスビルディング(１９１４年ころ築)

青島旧市街地のメインストリート・中山路にある、ドイツ租借地時代の電気会社のオフィス。
赤いタイルにより直線的なデザインが強調されている。日本風に言うなら〔セセッション〕的な作風。

◆ドイツ租借地時代の邸宅(１９１０年ころ築)

本国ドイツに劣らない本格的なモダンな邸宅。写真では分かりづらいが、全体を見るとかなりヴォリュームのある〔ユーゲントシュティル〕的な作風。

◆旧ヘルニッキ邸(1905年ころ築)

小魚山を少し外れた場所にある、ドイツ租借地時代に創建の住宅。
クラシカルなドイツ風の作りが特徴。
◆チンタオ・かっての日本人住宅(1920年から1930年ころ築)

最後に一つ番外編を。この邸宅は１９３０年代～４０年代前半、日本人の屋敷が多くあったという青島・大学路の近くにあったもの。恐らく、日本人により建てられたと思われるが、ドイツ風デザインを継承しているのが印象的である。
また、青島からドイツ人が退いたあとも、中国人や日本人の手により同地にはドイツ風の建物が数多く建てられ、現在もとても美しい町並みを形成している。

※撮影：２００６年４月、１１月
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★なお中国・青島の詳しい町並み紹介は別ブログ〔中国・青島＠建築探訪記〕にておこなっております。宜しければ、こちらにもお立ち寄り下さい。