明治学院大学記念館(ドイツ人建築家・ゼールを訪ねて)

◆明治学院大学記念館〔明治学院歴史資料館〕　　
　　◎設計：ランディス牧師、もしくはサルダ
　　◎改修：リヒャルト・ゼール〔Richard　Seel〕
　　◎竣工：明治23(1890)年、明治27(1894)年改修
　　◎構造：煉瓦造り、木造２階建て
　　◎所在地：東京都港区白金台1-2-37

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★ドイツ人建築家・ゼールが改修を手掛けた洋館

　東京・白金台にある明治学院大学。桜田通りからも見える同大学の記念館は、函館・旧ロシア領事館の設計者であるドイツ人建築家リヒャルト・ゼール(1854～1922)が建設に携わったものだという。

　現在、記念館として使われているこの建物は、明治２３年に同学院のアメリカ人宣教師H・M・ランディスの設計により、神学部校舎として建てられた。
　但し、近代建築研究の第一人者として知られる堀勇良氏(現文化庁勤務)の著書によると、フランス人建築家・サルダが同時期に設計した仙台神学校(明治２４年築)にスタイルが似ているそうで、実際にはサルダが設計を手掛けた可能性も考えられるという。私も以前図書館で坂本勝比呂氏の著書〔明治の異人館、昭和４０年刊〕に紹介されていた、明治学院と仙台神学校の写真を見比べてみたのだが、煉瓦造りの丸味を帯びた外観はとても似ているものだった。

　さて本題であるドイツ人建築家・ゼールが、明治学院記念館の建設のどこに携わったというか、木造ハーフティバーの美しい２階部分である。
　この記念館(旧神学部校舎)は、竣工から四年後の明治２７年６月の東京大地震により倒壊。かろうじて残った１階部分の上に、ゼールが新しく木造ハーフティンバー部分を増築し、現在みられる姿になったそうだ。ちなみにゼールと明治学院のランディスは交友関係にあったそうで、他には前回紹介させていただいた日本基督教団千葉教会(明治２８年築)も、ランディスの紹介によりゼールが設計を手掛ける事になったという。
　また明治学院記念館にも、ゼール作品のトレードマーク？とも言うべき〔ハンマービーム〕という意匠が用いられている。１階部分の煉瓦部分と２階の中世ヨーロッパ風のハーフティンバーの対比がとても美しく、改修を手掛けたゼールのセンスの良さが際立っている作品だ。

　明治学院はこの記念館のほかにも、ヴォーリズ設計の礼拝堂(大正５年築)、インブリー館(明治２０年ころ築)という歴史的建造物があり、とても美しいキャンパスである。また明治学院の周辺の白金・高輪には、明治末から昭和初期に建てられた歴史的建造物が何軒か残っているので、建築探訪にお勧めの一帯である。

※撮影：2009年4月・11月
※参考文献：〔ハンマービームを訪ねて　ページ３〕山田利行氏ホームページ
〔日本の美術　外国人建築家の系譜〕堀勇良氏著、２００３年ほか
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破風の天辺がへこんでいるのが、ゼールの得意技？〔ハンマービーム〕。
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※またゼール設計の京都・同志社大学クラーク記念館(明治２７年築)ですが未訪問のため、こちらは京都へ訪れる機会があった時でも改めて紹介したいと思います。