埼玉県戸田市立戸田第一小学校・旧校舎(昭和モダン建築探訪)

◆戸田市立戸田第一小学校
　 ◎設計：松本明男(K構造研究所)
　 ◎施工：鹿島建設株式会社
　 ◎竣工：昭和34(1959)年8月
　 ◎構造：鉄骨鉄筋コンクリート造2階建て
　 ◎所在地：埼玉県戸田市上戸田3

--------------------------------------------------------------------------
★埼玉県戸田市に現存する初期鉄筋コンクリート造校舎

　2007年のブログ開設以来、戸田第一小の校舎について埼玉県秩父市出身の建築家・関根要太郎(1889～1959)の晩年の作品と紹介してきた。しかし筆者の近年の調査によると関根の設計作品は、喜沢南の芭蕉川沿いに建つ市立戸田第二小学校という事が判明した。作風が全く違うので以前から疑問を抱いていたのだが、筆者の不完全な調査が世に広まったことについては、ここで深くお詫びいたしたい。

　そして戸田一小の本当の設計者は誰なのか?。先日埼玉県さいたま市浦和区にある埼玉県立文書館を訪れたところ、冒頭の写真でご覧いただいた戸田一小の建設記録が所蔵されていたので閲覧してみた。

　それによると設計は建築家で構造学者の松本明男(?～1996)率いる〔K構造研究所〕、施工は大手工務店の鹿島建設が手掛けたそうである。昭和34(1959)年5月に起工、この年の8月に竣工するという短期間でこの校舎は建てられた。なお新曽分校(現戸田市立新曽小学校)の鉄筋コンクリート造4教室の校舎も、K構造研究所の設計・鹿島の施工により同時期に竣工したという。新曽小学校も第一小学校と同系列のデザインだったが、校舎の拡張に伴いこちらは既に解体されている。

　松本明男が代表を務めるK構造研究所は、昭和31(1956)年に従来の半分の鉄筋コンクリートで建造物が作れるという、〔軽量鉄骨鉄筋コンクリート構造〕を開発し、同年に特許を取得している。更に昭和33(1958)年には、その改良版となる工法で再度特許を取得した。その頃に建てられたのが戸田第一小のこの校舎だった訳である。

　ちなみにK構造の特徴は、露出した鉄骨で建物を支えるというスタイルだったそうで、戸田一小も大きな庇と独特なベランダがそれを象徴している。それとこの記事の改訂前、この庇は後年の増築と紹介したが、県の文書館に所蔵されていた写真を見ると、竣工当時からこのスタイルだった。当時としてはかなり斬新なスタイルだったと想像される。

埼玉出身のベテラン建築家・関根要太郎設計による、戸田第二小学校が竣工した翌年に建てられたした戸田第一小学校のコンクリート造校舎。手法論こそ違えど、戦後国内の生活向上を考えていた関根要太郎と松本明男という二人の建築家の熱い思いが伝わってくる作品である。

　実はこの校舎、間もなく解体が予定されている。松本明男(K構造研究所)という建築家についてもっと詳しく調べなければと思っている今日この頃。近いうちにこの作品については再度紹介したいと考えている。

◆2020年2月、実際の設計者が判明したことに伴い、この記事は改訂させていただきました。何卒ご了承ください。
--------------------------------------------------------------------------
◆戸田市立戸田中学校講堂(体育館)・・・・・現存せず
　◎設計：関根要太郎
　◎施工：宗像建設株式会社
　◎竣工：昭和32(1957)年7月
　◎構造：鉄骨平屋・一部２階建て
　◎旧所在地：埼玉県戸田市本町

　※図版：『戸田町報』昭和３２年４月より


こちらは戸田第一小の2年前、関根要太郎の設計により予算・約１千万円で建設された戸田中学校の体育館。鉄骨造りでカマボコのような形をしている。昭和３０年から４０年代にかけては、このようなスタイルの体育館が多く建てられた。
また昭和３９年の東京オリンピックには、東京近郊に大規模な体育館が無かったため、各国選手団の練習場として使われたそう。この体育館は昭和５０年代初頭に取り壊されている。
********************************************************
★撮影・・・・・2009年10月、2012年8月(差し替え)