旧多摩聖蹟記念館(関根要太郎設計)その１

◆旧多摩聖蹟記念館　　
　◎設計：関根建築事務所(関根要太郎、蔵田周忠)
　◎施工：大倉土木株式会社
　◎竣工：昭和５(193０)年６月２６日
　◎構造：鉄筋コンクリート造平屋
　◎所在地：東京都多摩市蓮光寺５～１(都立桜ヶ丘公園内)
　☆多摩市指定有形文化財


京王線・聖蹟桜ヶ丘駅より小高い山を登って約３０分、武蔵野台地を一望できるような高台に建つ(現在は木々が生い茂って眺めは良くない)。いつ訪れても異様な雰囲気が漂う、不思議な建物である。ちなみに、この聖跡記念館、１９７０年代に子供向け特撮ヒーロー物ドラマのロケでよく使われていたので、不思議な外観の建物を記憶されている方もおられるかも知れない。

この聖跡記念館というのは、宮内大臣をつとめていた事もある田中光彰(１８４３～１９３９)らの呼びかけで、生前の明治天皇が現在の多摩市周辺に狩猟や鮎釣りに訪れた事を記念し、建設の運びになった。
なぜ関根がこの記念館の設計を担当する事に至ったかというと、建設資金の寄付者のなかに京王電鉄の関係者がいた事などから推測すると、昭和２年に京王電鉄が開業させた娯楽施設『京王閣』(東京・調布市、現存せず)の設計を『関根建築事務所』が担当していたので、それに続いてこちらの記念館の設計も手掛ける事になったと考えられる。ちなみに昭和のはじめには京王線沿線の東京都八王子市に、大正天皇の墓所・多摩御陵が作られていたので、京王電鉄側としては明治天皇にまつわるモニュメント(記念館)を作り、電鉄の更なる集客を狙っていたのではないかと思う。

当時の『関根建築事務所』は、チーフデザイナーの蔵田周忠(１８９５～１９６６)の最先端の設計センスで、数々の名作を世に送っていたが、こちらは大正期の雰囲気漂う作風。建物内部は渡辺長男作の明治天皇像が置かれ、郷土資料の展示などもされている。
また聖蹟記念館のある桜ヶ丘公園は名前通り桜の名所で、桜のシーズンの見学がお勧めだ。


●入館料：無料、休館日：毎週月曜日・年末年始、開館時間：午前１０時～午後４時（季節によって若干の違いがあるようです）