関根要太郎・蔵田周忠設計作品(函館編・７)

◆旧百十三銀行本店(現・ＳEC電算センタービル)
　◎設計：関根建築事務所(関根要太郎、蔵田周忠)
　◎施工：木田組(木田保造)
　◎竣工：大正１５年(１９２６年)１１月
　◎構造：鉄筋コンクリート３階建・一部２階(現在は全層３階建)
　◎所在地：函館市末広町(八幡坂下)


　函館の観光ポスターなどでお馴染みの八幡坂下に建つ、函館の地場銀行の旧本店。　
　大正末期、函館は金融不況だったのだが、地場銀行復興の起爆剤にしようとしたのか、モダンで豪華な銀行店舗が建設された。また、この筋向いに建つSEC末広ビルは、函館貯蓄銀行の本店として木田組の施工により同時期に建設されたものである。
　玄関上の半円形の小窓、軒部分の波打つ模様、玄関部の石積みなど、１９２０年代のドイツ最新建築の影響が強く見られる。これは、このころ関根建築事務所でチーフデザイナーを務めていた蔵田周忠(１８９５～１９６６)によるところが大きいといわれる。また、当時一般大衆向けの建築誌として親しまれていた雑誌『建築世界』では、地方の建物としては異例の８ページもの大々的な紹介がされている。設計者の関根たちにとっても、思い入れの深い作品だったのだろう。
　１年以上の工期を経て竣工した函館の銀行本店だが、昭和に入り銀行の業績が更に落ち、昭和３年の春には小樽に本店を置く北海道銀行に吸収合併されてしまい、本店としての役目は僅か１年半という悲劇の建物だった。

　戦後は北海道拓殖銀行の店舗として使われていたが、昭和６２年よりSECの事務所として再活用されている。その際に内部は補強工事が施され、竣工当時の面影はまったくない。