埼玉県秩父郡の小鹿野春祭り2025、その3(建築家・関根要太郎の故郷を訪ねる)

◆小鹿野春祭り、小鹿神社例大祭

　・・・・4台の笠鉾と屋台が曳行される、歴史ある秩父地方の美しい祭り

　本年は4月18日と19日の金・土曜日に、埼玉県秩父郡小鹿野町でおこなわれた小鹿野春まつり(…小鹿神社例大祭)。長年、建築家・関根要太郎(1889～1959)の郷里である、埼玉県秩父市で7月19日と20日におこなわれる秩父川瀬祭りと、三大曳山祭りの一つとして古くから有名な12月2日と3日におこなわれる秩父夜祭(…秩父神社例大祭)の両祭りには何度か訪れたことがある筆者ですが、秩父地方には同様の曳山祭りが数多くあることを知り、訪ねたのが小鹿野春まつりでした。

　歴史ある秩父夜祭の影響があってか、秩父夜祭と同様に歴史ある山車の曳山祭りが多くおこなわれる秩父地方。毎年３月に秩父市山田でおこなわれる山田の春祭り(…恒持神社例大祭)、4月に秩父郡横瀬町でおこなわれる宇根の春祭り(宇根八阪神社例大祭)、7月におこなわれる秩父神社の例祭である川瀬祭り、そして小鹿野春まつりが代表的なものと言えます。

　小鹿野の祭りは秩父夜祭にとてもよく似た規模の、屋台と笠鉾と呼ばれる4台の山車が出され、秩父夜祭、川瀬祭りに次ぐ大きな祭りです。

　当初は祭りが催される小鹿野郷の民宿に一泊し、金曜日の宵宮・土曜日の本祭と祭りをたっぷりと満喫してみようと考えていた筆者でした。しかし予約開始と同時に満室になっており、日帰りの祭り見学へとスケジュールを変更。埼玉県南部の自宅を朝5時半に出発し、片道約3時間半(…西武の特急電車とバスの待機時間を含む)をかけて秩父郡小鹿野町へ向かったのは、初回の祭り探訪記の時に紹介した通りです。早朝出発の甲斐もあり、小鹿野の美しい山車を早い時間から撮影できました。

　祭り2日目にあたる土曜日は、小鹿野町の中心部である小鹿野郷各所に置かれた各町の会所から、4つの山車が小鹿野郷北部に鎮座する小鹿神社(…こじかじんじゃ)に向けて曳行されます。

　そして腰之根(宮元)、新原、上町、春日町の4つの山車が正午ころまでに神社に到着。神主からの祈禱を受けたのち、約2時間の休憩を挟み、小鹿野郷の旧市街地を通り約3時間かけて小鹿野郷東部の元宮へ向かいます。

　元宮は大正初期まで小鹿神社の本殿があった場所で、秩父夜祭でいうと熊木町にある御旅所に相当する、祭りがクライマックスを迎えるポイントでもあります。午後の山車曳行の前におこなわれる御神幸祭(…御輿渡御)に同行し、元宮近くに建つ小鹿野町役場付近まで行きましたが、歩き疲れてしまい元宮には訪れておりません。次回小鹿野まつりに訪れた時には元宮を訪問し、小鹿野の祭りとその歴史をもう少し深く体感したいと思っている次第です。

　そして午後の山車曳行の間に少し遅い昼食をとりましたが、昼食をとった食堂そばの特設会場でおこなわれていたのが、小鹿野歌舞伎の上演です。小鹿野の歌舞伎は江戸中期からはじめられた、約220年の歴史を持つ郷土芸能で、小鹿野各地でおこなわれる祭りに合わせ、上演がおこなわれているとの事です。

　秩父地方を代表するの郷土芸能として、以前からその存在は知っていましたが、今回僅かな時間ですが見る事ができました。小鹿野歌舞伎鑑賞も次回のテーマになった訳です。

　様々な発見や感動があった小鹿野の春まつり。翌日は早い時間に出勤する事もあり、少し早めの時間に帰る事にしました。そして帰りのバスが発車する時間までのあいだ、小鹿神社参道入り口で元宮へ向かう山車を鑑賞した次第です。このポイントは県道と交わる場所で、各町会の山車は〔車地巻き：シャチ巻き〕と呼ばれる力作業で、山車を回転させます。更に山車が到着する前には〔金棒突き〕という先導役を務める少女たちが、その場を回転しながら清めるという儀式も見る事ができました。

　別れが惜しくなりましたが、早朝発で夫婦とも疲れ切っていた事もあり、春日町の山車を見送り小鹿野の町を後にしました。祭りは午後6時過ぎに元宮から各町会の山車は、各会所へ向けて出発。これで山車の曳行は終わりとなります。

　そして午後8時半からは奉納の花火が打ち上げられ、フィナーレを迎えます。このようにスケジュールを見ていると、1泊して祭りを見てみたいと思ってしまいました。

　とても美しく感動的だった小鹿野春まつり。美しい町の祭りがこれからも盛大におこなわれることを祈り、小鹿神社や各町会の会所に多めの賽銭を入れさせていただきましたが、微々たる額であることを申し訳なく思っています。また小鹿野の町で食事や買い物をしようと思いましたが、店があまり開店していないこともあり、昼食以外お金を使うことも殆どありませんでした。このような地方の歴史ある祭りを訪れるたび、何かしなければならないと思いつつも、見物だけで帰ってしまった今回の祭りです。

　そして本日は小鹿神社の山車の飾り置きから、夕方に小鹿野を後にするまでの様子を紹介したいと思います。

　小鹿野春まつりにまた訪れることがあるなら、初日の小鹿野郷近郊の畑地を曳行される山車の姿を撮影したり、夕方におこなわれる歌舞伎鑑賞、2日目の元宮での山車揃い踏みなどを見たいと思っている次第です。また一つ秩父の美しい祭りを見れて、とても充実した一日でした。また次回からは本来のテーマである、近代建築研究の発表を再開したいと思います。今後とも当ブログを宜しくお願いいたします。

◆令和7年、小鹿野春まつり(小鹿神社例大祭)、その3

小鹿神社の境内より。左から腰之根(宮元)笠鉾、新原笠鉾、上町屋台、春日町屋台。

◆令和7(2025)年、小鹿野春まつり(小鹿神社例大祭)

　◎4月18日：宵宮…屋台・笠鉾曳きまわし、歌舞伎上演

　◎4月19日：本祭…屋台・笠鉾曳きまわし、歌舞伎上演、神幸祭

　　　　　　　　　　神楽奉奏、剣道演武、煙火奉納ほか

　　❖埼玉県有形民俗文化財

　　　春日町、上町屋台(昭和56年：1976年3月指定)

　　　新原、腰之根笠鉾(平成11年：1999年3月指定)

★新原笠鉾

小鹿神神社へ向けて曳行される新原笠鉾。前回も紹介したように小鹿神社参道を曳行される上町屋台、新原笠鉾を追い抜き神社へと入った訳である。

そして小鹿神社に入る。

★腰之根(宮元)笠鉾

神社境内には既に腰之根笠鉾が到着していた。用具を入れるリアカーも笠鉾と同様の花飾りが施されていた。

冒頭に掲載した写真も腰之根の笠鉾。左手に見える尖った山は秩父の霊峰・武甲山(標高1304メートル)。

小鹿神社の参拝後、境内の広場で待機していると新原の笠鉾がやって来た。新原笠鉾、小鹿神社に到着。腰之根笠鉾と新原笠鉾。神職による祈祷をこの後受けることになる。金棒突きの少女たちもお昼休みに。

★上町屋台

腰之根と新原の笠鉾を鑑賞している間に、上町の屋台が神社に到着。

★車地巻き(…しゃち巻き)
小鹿野春まつりの山車は、車地巻きと言われる回転軸を使った装置で山車を回転させる。秩父夜祭の〔ぎり回し〕と呼ばれる、梃棒を使い山車を傾斜させる力技比べると負担は少ないものの、男の力が必要な大変な作業である。

カラフルな装束の腰元には小鹿野町のイメージキャラクター〔おがニャッピー〕のぬいぐるみが。
車地巻きはこれにて終了。

★春日町屋台

町の東部に会所を置く春日町は正午ちかくに神社に到着。

ちなみに小鹿野春まつりの囃子手は、地元の青少年たちが担当しているという。

春日町屋台の後幕は猩々(…しょうじょう)という空想上の生き物。秩父夜祭では宮地屋台が、後幕にこの刺繍を施している。

これで腰之根笠鉾、新原笠鉾、上町屋台、春日町屋台という4台の山車が揃い踏み。４台の山車が揃ったこともあり、神社は結構な賑わい。午後へ向けて祭り関係者は昼食の休憩時間に。

たっぷり山車を鑑賞して、新緑眩しい小鹿神社を後にした。★小鹿神社参道で見た両神山(標高：1723メートル)

秩父の霊峰にして日本百名山の一つ。お膝元の小鹿野という事もあり、迫力ある両神山を拝めると思ったものの、手前の山に遮られ、なかなか全体像を撮影する事ができなかった。小鹿神社の参道で両神山の比較的全体な姿を撮影できた次第である。

神社参道にはこのようなポスターが掲示してあった。神社参道には年季の入った洋館も建っていた。

レトロな香り漂う小鹿野の町並み。★小鹿野歌舞伎
この日、観光交流館裏の特設会場でおこなわれていた、小鹿野名物の歌舞伎。220年の歴史を持つという郷土芸能。昼食は町の観光交流館内に入る食堂を利用。かつての旅館をリノベーションした建物だという。

★神幸祭(…御輿渡御)

　

午後の山車曳行に先立って、御神輿が小鹿神社と元宮を往復した。

★腰之根笠鉾

神輿渡御に次いで腰之根笠鉾が。★新原笠鉾

神社参道と県道が交差する角に陣取り、残りの山車を撮影。

★上町屋台

お手伝いの若者たちのほか、午後からは地元高校の野球部員も山車曳きに参加し、最強の布陣となっていた。

山車が来るのでのあいだ金棒突きの少女たちが、山車が回る場所を鎮めていた。

★御神輿行列

上町屋台と入れ違うように御神輿行列が元宮から帰還。多くの山車が通過し、道路には車輪の跡がこのように残っていてた。
★春日町屋台

最後に春日町の屋台を撮影して小鹿野の町を後にした。★西武観光バス、西武秩父行き

帰りは臨時のバス停より西武秩父駅行きのバスへ乗車。約45分かけて秩父市内へ戻った。

西武バスの独特なカラーリングは、通称〔笹の葉カラー〕と呼ばれ、昭和35(1960)年頃より使われる伝統の色彩である。レトロな小鹿野の町並みととてもマッチしていた。

夕方の武甲山を望みながらバスは走る。

2つの小さな峠を越え、荒川を渡り秩父の市街地・旧大宮郷へ到着。
右に見える黒い和風商家は、関根要太郎のお母さまの実家にあたる秩父館(明治12年築)。
帰りの特急電車の予約をしていなく、駅の券売機を見たところ満席。そういう事で土日・祝日のみ運転される、S‐trainという有料着席電車のチケットを買う。

★西武秩父駅とみなとみらい線：元町・中華街駅を結ぶS‐train

この日は特急電車が満席だったため、S‐trainという有料着席電車を選択。

西武秩父から東京メトロ副都心線、東急東横線を経由し、みなとみらい線の元町・中華街駅まで2時間半をかけて走るというマニア泣かせの電車だ。

年に数回、土曜・祝日に横浜へ行く時は、混雑していないこの電車を利用している筆者である。

埼玉県民の筆者は所沢駅で下車。

そしてここから埼玉某所の自宅へ電車を乗り継ぎ帰宅した。

★今回をもちまして、3回に渡る小鹿野春祭りの探訪記を終わらせていただきます。皆さま誠にありがとうございました。

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★参考文献・参考資料

「秩父屋台囃子　Facebook」

「小鹿野町ホームページ」ほか

★撮影・・・・2025年4月19日