秩父の芝桜と秩父の町並み(建築家・関根要太郎の故郷を訪ねる2023)

◆秩父羊山公園の芝桜と秩父の町並み

　・・・・数年ぶりに羊山公園の芝桜の丘を訪ねる

　早いもので今年も4月下旬、今日からゴールデンウイークに入ります。今年も大型連休とは縁のない私ですが、先日今年初めて埼玉県秩父市を久しぶりに訪ねて参りました。秩父と言えば当ブログの主人公である建築家：関根要太郎(1889～1959)の故郷で、古くは養蚕や林業、近代は銘仙や石灰採掘で繁栄を極めた町であります。

　そして秩父の春の風物詩と言えば、羊山公園の南側エリアに咲く芝桜の丘でしょう。

　羊山公園の芝桜は、17600㎡の敷地に10品目、40万を超える株が植栽されているとの事です。秩父の芝桜が春の風物詩として知られるようになったのは、今から20年ほど前でしょうか。秩父芝桜の丘の商業的な成功に影響され、その後日本各地に芝桜の園が相次いで開園しましたが、元祖芝桜の丘ともいえる秩父は、とても安定したブランド力と美しさを誇っていると思います。

　秩父芝桜の丘の特徴と言えば、その背後に聳える秩父の霊峰である武甲山とのコントラストでしょう。日本武尊の伝説が山名の由来となり、近年は日本二百名山にも選定されている武甲山ですが、山の北側部分が石灰岩の大鉱床で形成されている事もあり、古くからセメントや漆喰の原材料となる石灰岩採掘がおこなわれています。

　特に戦後の高度成長期には秩父セメント、三菱セメントなどによる大規模採掘がおこなわれたことにより、昭和50(1975)年ころからはその山体が大きく削られるようになり、現在ではこのような姿になってしまいました。

　現在では痛々しい山容になってしまった武甲山。しかしここから採掘された石灰岩が、高度成長期の建築ラッシュを支えたという事を頭の片隅に入れて頂きながら、芝桜の丘の向こうに見える武甲山を見ていただくと、秩父の風景もまた違ったものに見えるかもしれません。

　そして芝桜の丘の見学後、秩父の隠れた名スポットの一つである〔見晴らしの丘〕を経由して、秩父の旧市街地を簡単ながら歩いて参りました。秩父市内ではこのところ、歴史的建造物のリノベーションが積極的におこなわれており、以前も紹介した番場町の旧小池煙草店、宮側町の旧丸十薬局の他、旧小池煙草店そばの旧靴店が、芋スイーツの店としてオープンしていたのは、この日の訪問での驚きでした。その他にも今年の夏には、古民家をリノベーションしたプチホテルも開業するとの事です。

　その後、秩父神社にお参りし、建築家・関根要太郎の母親の実家である旧旅籠の秩父館(明治12年ころ築、現ほっとすぽっと秩父館)に寄り、この日の秩父の旅を終えました。秩父館も関根要太郎の姪にあたる、館の主であるEさんが亡くなって寂しい限りですが、秩父に訪れると必ず訪れてしまう、秩父の大好きな場所の一つであります。

　しかしこの日の秩父訪問で感じたのは、芝桜の丘を含め秩父を訪れる人の大部分が自動車で訪れていたという事です。実は西武鉄道の秩父へのアクセスは抜群ですし、秩父鉄道も運賃は少し高いですが、レトロ感満載の旅情をたっぷり満喫できる素敵なローカル線です。個人的には鉄道の旅をお勧めします。

　そういう事でこの先は、この日の訪問で撮影した秩父芝桜と、秩父市内のレトロ建築の幾つかをご覧ください。

　

◆秩父羊山公園

　◎設計：本多静六(公園北側の一部分)　

　◎開園：昭和55(1980)年

　　　　：平成12(2000)年ころ・・・・芝桜の丘

　◎所在地：埼玉県秩父市大宮

この日は西武の特急電車が満席だったので、飯能までは急行電車、途中駅の飯能から秩父線のローカル電車に乗り換え秩父へ向かった。途中の高麗駅から。ここから徒歩15分ほどの場所にある巾着田の曼珠沙華(彼岸花)は、春の秩父芝桜に対し秋の風物詩になっている。

西武秩父線の終点西武秩父駅の一つ手前、横瀬駅を下車し、ここから羊山公園へ向かう。秩父の霊峰・武甲山。長年に渡りセメントの原材料である石灰岩採掘のため山は削られ、現在はご覧のような姿に。東京都心からでもその削られた山容を確認できる。近年はコンクリートの需要が減ったようで、以前のような大規模採掘はおこなわれなくなった模様。西武秩父線が走る奥武蔵地域の山麓には、やはりこの季節が見頃の藤も多く花を咲かせていた。

芝桜の丘を後に秩父市内へ。

秩父羊山公園の見晴らしの丘より。眼下に秩父神社、秩父市役所、西武秩父駅を見る事が出来る。

羊山公園内にある秩父事件追念碑。明治17(1884)年秋に起きた農民や庶民の武装蜂起事件〔秩父事件〕を、記憶にとどめるため設置されたもの。関根要太郎、山中節治、山中眞三郎兄弟の親類、筆者が今から20年前にお世話になった旧大滝村上中尾の山中義一さん(故人)の名も、賛同者として碑に刻まれていた。

ここ1年間でリノベーションがおこなわれ、リニューアルオープンした歴史的建造物の一つ旧小池煙草店。現在はホテルとカフェとして使われている。

秩父神社の門前に建つМ家住宅。関根と同じく秩父出身の建築家：山田醇(1884～1969)設計によるもの。住宅建築の名手として知られた山田醇らしい和洋折衷の美しいモダン邸宅だ。

秩父地方を鎮守する番場町の秩父神社。何年かに渡りおこなわれていた神社の改修工事もほぼ終わり、社殿の彫刻の数々も再び見学出るようになった。宮側町にオープンした旧丸十薬局。戦後になり店舗のファサード部分が改造されていたが、往年の姿をイメージしたものに復元された。レストランとプチホテルとして営業が始まっている。最後に関根の実家である秩父館。

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★撮影・・・・・2023年4月