函館山山頂から見える函館の歴史的建造物群

◆函館山から見える函館の歴史的建造物群

　・・・・夜景観賞だけではない函館山頂からの近代建築ウォッチングの勧め

　

　夜景があまりにも有名な函館山の山頂からの眺め。標高334メートルの山頂展望台から見る夜景は、世界的にも有名である事は私が説明するまでもありません。古くから神戸の摩耶山、長崎の稲佐山と共に日本三大夜景と言われる函館山の夜景、近年の新日本三大夜景などでは、函館山と神戸摩耶山は選ばれていない事が多いですが、陸繋島のあの独特な地形から輝く夜の町の輝きは、一度見たら決して忘れられないものだと思います。

　また函館夜景を世界的に有名にさせたのは、函館山ロープウェイの存在なくして語れないでしょう。函館山ロープウェイは昭和33(1958)年の開業。当初は31人乗りや45人乗りの小型なゴンドラで営業していましたが、昭和63(1988)年からは125人乗りの大型ゴンドラを導入し、最大5分間隔で運行できるという輸送力を誇ります。

　それでも日没まもなくはロープウェイ乗り場には長蛇の列が出来ますが、これだけのアクセスの良さであの夜景が見れる事を考えると、文句は付けられないと思います。

　現在は函館観光の要てある函館山ですが、当ブログの主人公である建築家・関根要太郎(1889～1959)が函館で活躍していた戦前は、軍の要塞が置かれたため、山へ向けての撮影は固く禁じられていました。当時の古写真を見ると、山へ向かったショットの写真が極端に少なかったり、函館山が白く塗られているのはそのためです。当時は軍(函館要塞および津軽要塞)要塞司令部の検閲を受けないと、公には写真は発表できませんでした。

　夜景の話が続いてしまいましたが、夜景の他に函館山からの眺めで、お勧めなのが日中の時間帯です。冒頭のご覧いただいた写真は、令和2(2020)年の秋に撮影したもので、市街地に函館山からの日が遮っていない昼過ぎという事もあり、町中がとてもよく見えています。

　また今回の写真を撮った時期は晩秋という事もあり、落葉が始まった時期であまり目立っていませんが、夏場には昭和9(1934)年3月の函館大火後の復興事業で整備された、グリーンベルト(防火林)の美しい緑が、とても鮮烈に目に飛び込んできます。

　当ブログでも何度となく紹介してきたように、函館は陸繋島という地形の関係上、津軽海峡から吹く強い風が影響し、昭和初めまでは度重なる大火に悩まされてきました。その解決法の一つして、先のグリーンベルトの他に幅員の広い直線的な道路(坂道)を設置し、火災の類焼を最小限に食い止めようとする工夫をおこなっています。そのような規則的な街路の区画も、函館の町並みの美しさを彩っていると思います。

　そして昼の函館山で、もう一つチェックしたいただきたいのが、眼下に多く建つ歴史的建造物群の数々でしょう。ハリストス正教会をはじめとした元町の教会群や黒瓦屋根が印象的な東本願寺函館別院、末広町のかつての銀行建築や事務所建築、ベイエリアの赤レンガで建てられた旧郵便局や倉庫、船見町の高台に建つ旧ロシア領事館など、箱庭を覗いているかの如く見る事が出来ます。

　国の重要文化財に指定されている函館を代表する洋館・旧函館区公会堂は、薬師山に遮られ函館山の山頂からは見えませんが、この町の歴史的建造物群をほぼ確認することが出来ます。

　また建物本体は確認できませんが、遠く上湯川のトラピスチヌ修道院、上磯市(上磯)のトラピスト修道院の森も函館山から見る事も出来ます。群のさいが置かれていたのが納得できる、眺めの良さです。

　そういう事で本日は函館山の山頂から見える歴史的建造物と一部は拡大画像、そして逆に函館の市街地から見た函館山山頂の写真の二部構成で記事を進めていきます。以前撮影した写真を拡大していくと、様々な建物が見つかりチョイスに悩みましたが、幾つかの写真を掲載してみました。そういう事で本日は函館の美しい歴史的建造物の数々をお楽しみください。