埼玉県秩父市の秩父館と秩父夜祭2021(建築家・関根要太郎の故郷を訪ねる)

◆秩父館と秩父夜祭

　・・・・令和3年、縮小開催の秩父夜祭を見る

　昨年に引き続き新型コロナウィルス問題に翻弄された今年ですが、早いもので気が付けばもう12月。この季節になると、気になる出来事が一つあります。それは当ブログの主人公である、建築家・関根要太郎(1889～1959)の故郷である埼玉県秩父市でおこなわれる、〔秩父夜祭〕です。今年は仕事の休みと祭りの日程が合い、夜祭見物のため久々に秩父を訪ねました。

　秩父夜祭といえば秩父市中央に鎮座する秩父神社の例祭であり、毎年12月1日から6日にかけておこなわれものです。12月2日が宵宮、3日が大祭にあてられ、この2日間は提灯で飾り付けされた6町による山車や笠鉾が市内中心部を練り歩きます。

　3日の夜半には神社に集結したこれらの山車と笠鉾が、神社から1キロほど離れた熊木町の御旅所へ向けて御神幸行列に続き出発。そして御旅所手前の団子坂と呼ばれる急坂では、山車の曳き手を総動員し20トン近い重さがあるという山車を引き上げ、祭りは最高潮を迎えます。

　この祭りの雄大さと美しさから秩父夜祭は、京都の祇園祭、飛騨高山の高山祭と共に、日本三大曳山祭りと呼ばれ、日本を代表する祭りの一つとも言える存在です。時代は明治から昭和初期に入ると、養蚕や銘仙業、石灰採掘などの好況に支えられ、祭りには更に発展を続けます。また昭和37(1962)年には笠鉾と屋台が国の重要有形文化財に指定され、更に昭和54(1979)年には国の重要無形文化財に指定されるなど文化的価値が認められています。そして平成28(2016)年にはユネスコの無形文化財に指定されるなど、その祭りの文化的な価値は世界的にも広く認められました。

　そのように世界的にも名が知られるようになった秩父夜祭りですが、当日の見物客の総数は30万人以上といわれ、この日の市内は歩けないほどに人が密集する場所が出るなど、近年では慢性的な混雑が課題になっているようです。

　そのような問題を解決する事もあってか、近年では本町・中町など一部地域の道路は拡張工事を実施。しかしその工事に伴い、秩父往還沿いに多く残っていた風情ある古民家の多くが解体されてしまい、以前に比べ殺風景な町並みになってしまったのが現状です。

　そして令和2(2020)年からの新型コロナウィルス蔓延により、本年の秩父夜祭は規模を縮小しておこなわれることになりました。この祭りの名物である山車や笠鉾の練り歩きは中止となり、夜祭は御神馬供奉や、僅かな奉納花火の点火など限られた行事のみとなりました。山車の練り歩きも無いこともあり、秩父往還は出店も通りに並ばず、普段のように自動車がひっきりなしに走っているのを見て、とても寂しさを感じた昨日であります。

　そういう事で昨日は西武秩父駅から秩父神社を詣で、建築家・関根要太郎の実家であるかつての旅籠・秩父館(明治12年築)でコーヒーを飲み、市内を散策して日没まもなくに帰って参りました。

　観光施設として秩父館がリニューアルされる前は、要太郎の姪にあたる秩父館の主・Eさんのご厚意により、毎年のように土間から祭りを見物したものです。それから時は流れ、一観光客に戻り近くの秩父神社から聞こえるお囃子を聞きながら、秩父館で穏やかなひと時を過ごした今年の秩父夜祭でした。

　なお、この日は偶然なのか秩父館の2階雨戸が閉ざされていました。私は今から10数年前に友人や彼の家族と共に、秩父館を拠点に夜祭を見物させていただいた時の出来事を思い出しました。

　そのときも秩父館2階の雨戸が閉ざされており、友人と「なぜ折角の祭りなのに、眺めの良い2階の雨戸を閉めているのですか?」と、秩父館の主・Eさんの姉で地元の歴史にお詳しいMさん(故人)に伺ったところ、「昔からの慣わしで、神様が乗った山車を2階から見下ろすのは失礼だという事で、祭りでは高い階の雨戸を閉めている」という答えが返ってきました。今では高い階からの見学スペースはドル箱のエリアとなっていますが、このような風習がある事も地元の方から聞いて初めて知った話でした。

　今年は祭り縮小もあり、美しい山車や笠鉾、夜間を彩る無数の花火も見ることは叶いませんでした。実は日没まもなくにおこなわれる御神行幸行列だけ見学しようと思いしたが、密を避けなければならない現在の世情もあり、この日は見るのをやめました。

　また本年の写真だけでは祭りの記事としては寂しすぎるので、今回は今から5年前の平成28(2016)年に撮影した秩父夜祭の宵宮の写真も幾つか掲載してみました。大祭は先にも紹介したように見物客で大混雑していますが、その前日におこなわれる宵宮は比較的空いており、山車の見物には最適です。

　そういう事で来年こそは夜祭、そして7月19・20日の川瀬祭りが無事におこなわれる事を切に願っております。ではここからは秩父館や秩父神社、夜祭の宵宮など秩父に関する写真をご覧ください。

　

◆秩父館(ほっとすぽっと秩父館)

　◎設計：不詳

　◎施工：不詳

　◎竣工：明治12(1879)年

　◎構造：木造2階建て

　◎所在地：埼玉県秩父市宮側町18-12

　　❖平成20年：彩の国景観賞2008受賞

秩父館は秩父を舞台にした、アニメドラマのファンの皆さんの集いの場となっていてる。

秩父というと冬の夜祭も有名だが、夏の川瀬祭りもなかなかのもの。詳しくは下の記事を参照して頂きたい。

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★令和3(2021)年秩父夜祭り

西武秩父駅から。秩父といえば霊峰・武甲山に守られた町。1世紀近くに渡る石灰採掘の結果、ご覧の山容になってしまった。

西武の新型特急：Laview(ラビュー)。筆者の秩父訪問の新たな楽しみになったのがこの電車に乗ることである。建築家・妹島和世(1956～)さんのデザイン監修により、平成30(2018)年にデビュー。窓が大きく取られ車窓からの沿線の風景を満喫でき、ゴージャスな椅子や機能的な車内施設など素敵な特急電車である。

西武秩父駅には駅員一同からのこのようなメッセージも貼られていた。

ちなみに西武秩父駅の敷地は、関根要太郎の出身校・秩父郡立農学校(現埼玉県立秩父農工科学高校)の跡地に建てられたもの。駅前には秩父農学校跡の記念碑が置かれている。

秩父神社。今年の夜祭は山車の曳き回しはおこなわれず、幾つかの奉納行事のみがおこなわれた。

当日の御神幸行列で使われる馬。

この日の秩父は神社を除き閑散としたものだった。夜祭最大のハイライトの地・団子坂もご覧のように閑散としていた。-----------------------------------------------------------------------------------★平成28(2016)年秩父夜祭り宵宮
夜祭の山車曳き回しまゴールである御旅所と、その最後の難関・団子坂。

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★参考資料

「秩父神社ホームページ」

「秩父夜祭会館ホームページ」

「ウィキペディア：秩父夜祭」

★撮影・・・・・2016年12月。2021年2月