JR東京駅赤レンガ駅舎(大正モダン建築探訪)

◆JR東京駅
　・・・・大正3年竣工、67年の時を経て竣工時の姿へと復原された赤レンガ駅舎


　このところ私のブログの冒頭の挨拶と言えば、記事の更新が遅れたことを詫びるフレーズだらけだが、本日の記事は前回より約三ヶ月振り。本当にかなりのブランクが空いてしまった。実はこの間に入籍や、それに伴う引っ越しなどがあり、休日はブログどころではない多忙な日々を送っていたのだが、それもどうにか一段落。本日は久々にパソコンに向かって、記事を作成しはじめた訳である。
　ブログの発信元は武蔵野台地の中央部から東端へと移ったが、これからも建築家・関根要太郎(1889～1959)の研究発表をはじめ、私が気に入った素敵な歴史的建造物を紹介していきたいと思うので、またこちらのサイトに立ち寄って頂けたら幸いである。

　そういう事で再開一回目の記事は、皆さんもご存じの東京の新名所を取りあげてみようと思う。その建造物とはJR東京駅・丸の内口の赤レンガ駅舎。筆者が説明するまでもなく、この駅舎は帝都東京の中央停車場として明治30年代に建設計画が決定し、明治建築界の大家・辰野金吾(1854～1919)率いる辰野葛西建築事務所の設計により、大正3(1914)年に竣工したものである。

　また東京駅の赤レンガ駅舎は、昭和20年5月25日の空襲により駅舎の大部分を焼失してしまったが、戦後の復旧工事により焼け残った赤レンガの壁面を生かしながら、規模を縮小して再建。バブル景気に沸いた二十数年前には、建て替えの話もあったそうだが、多くの人の尽力により東京駅の保存が決定。平成19(2007)年には竣工当時の姿へと戻す復原工事が開始され、昨年(2012年)秋にその工事が終了。そのリニーアルオープンと同時に、東京観光の新スポットとなった訳である。
　リーズナブルな価格設定だった、赤レンガ駅舎内にあった精養軒などは改修前に何度か訪れた事はあったが、復原後のレストラン・ホテルはかなりお高めなお値段。復原に相当な費用を費やした訳だから、そういう事に関しては目を瞑らなければいけないのかも知れない。

　さて復原工事が完成した東京駅、何よりも凄いのが、その駅舎の規模。述べ床面積もその当時の建造物としては破格のものだが、駅の両翼の長さは何と三百メートル。中央線や京浜東北線などの通勤電車10両編成の長さが二百メートルなので、それが余裕で納まってしまう長さは驚愕に値する。
　この赤レンガ駅舎が、国の威信をかけて建てられたビックプロジェクトだったというのは、書籍を通して頭にインプットされていた筆者であった。しかし戦後修復された控えめな東京駅舎の姿では、そこまでの説得力がなかったのが正直なところであった。しかし竣工当時の丸型ドームや3階建てに復原された現在の姿を見て、それをまじまじと実感させられてしまったのである。

　また竣工当時の華麗な姿へと蘇った、東京駅舎の竣工は大正3年。その当時の国内の建築界と言えば、セセッションやユーゲントシュティールなどのモダンデザインが開花し始めた時期であった。しかし辰野金吾設計による東京駅舎は、俗に辰野式と呼ばれる、赤レンガの壁に花崗岩の白帯を巻いた、クラシカルなデザインが特徴として挙げられる。東京駅のお堅い寸胴な外観は、西欧のモダンデザインを好む当時の若手建築家たちには、不評だったというが、帝都のモニュメント的役割を考えれば致し方ない選択だったのかも知れない。

　モダンデザインが開花しはじめた大正初期、明治の遺産の如く現れたお堅い巨大駅舎。明治と言う時代の終わりと、大正と言う新しい時代の始まりの狭間に咲いた異色作のようにも思えた筆者であった。・・・・。

◆JR東京駅
　◎設計：辰野金吾(辰野葛西建築事務所)
　◎施工：大林組
　◎竣工：大正3(1914)年12月
　◎構造：鉄骨煉瓦造3階建て・・・・竣工時
　◎所在地：東京都千代田区丸の内1-9-1
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出札しなくても、構内でも赤レンガ駅舎を鑑賞できる場所は何箇所かある。**********************************************************
★参考文献・・・・「都市の記憶Ⅱ　日本の駅舎とクラッシックホテル」鈴木博之氏著、2005年、白揚社
★撮影・・・・・2012年7月・9月、2013年2月・6月・9月