京都市立旧西陣小学校(昭和モダン建築探訪)

◆京都市立旧西陣小学校
　　・・・・・織物の町・西陣に建つ昭和11年竣工のモダニズム校舎


　前回の旧西陣織物館(大正3年築)を撮影後、向かったのがその北数100メートルの場所にある幸有町。
　西陣と言えば北野天満宮や上七軒、そして紋屋町、笹屋町などの茶屋や織物問屋が軒を連ねる風情ある街並みが知られるが、この界隈も古い町屋が所々に残り、何となく素敵な風情を醸し出している一帯であった。そのような西陣の町に建つのが、今回紹介する京都市立の旧西陣小学校である。

　昨年の春、 京都市立旧立誠小学校(昭和3年築)を取り上げた時にも触れさせて頂いたが、京都市内には大正末から昭和戦前に建てられた〔番組小学校〕と呼ばれる、鉄筋コンクリート製校舎が数多く現存しているとの事で、今回もそのうちの何軒かを訪ねてみた訳である。
　なおそれ以前にも紹介させて頂いたが、京都の番組小学校と呼ばれる校舎群の特徴は、当時の地元商工業者の寄付により建設に至ったものが多くあったと言う。そういう事で、京都を代表する商業地域である西陣に、どのような小学校が建てられたのかという興味を抱き、この旧小学校を訪れた筆者だった訳だ。

　他の大都市と同様、都心の児童数減少に伴い他の小学校と統廃合され、現在は空き家になっている旧西陣小は、昭和11年に京都市営繕課の設計により建てられたものだという。以前紹介した旧立誠小学校、旧明倫小学校は昭和初年の竣工だが、少し年代が下っている事もあってか、外観のデザインは装飾を極力排したモダニズムの影響が感じられる。

　また他の方のサイトや近代建築を取り扱ったガイドブックを見てみると、この頃の京都市の公立小学校舎は玄関と階段室を一纏めにし、塔のような作りにするのが流行りだったようで、西陣小に似たようなデザインの小学校舎が幾つか現存しているようだ。
　あと西陣小学校の校舎を見学して感心したのが、その柱数の多さ。恐らく耐震面を考慮してこのような設計になったと想像されるが、この時期のコンクリート建築にしては珍しい念の入れようである。西陣の町衆たちがこの小学校舎建設に際し、拘りに拘り抜いたポイントではないかと筆者は勝手に想像してしまったのである。

　今回京都の番町小学校を幾つか巡ってみて驚いたのが、使用されていない空き家状態のものがかなり多かった事である。この西陣小学校は改修工事がおこなわれるとの旨の看板が貼られていたが、このあと訪ねた東山の旧六原小学校(昭和6年築)などは、外壁のタイルが大きく剥離、道路にそれらの多くが落下し、近隣住民と市関係者と思わしき人たちが、何やら心配そうに実況見分をおこなっていた。町の貴重な宝と言いたいところだが、その雲行きはかなり不透明なのかなとも思ってしまった今回の京都訪問であった。
　旧西陣小学校の門前に貼ってあった、「改修工事、ただし建築工事」という立て看板も一体どういう意味を指しているのかと、変な勘ぐりをしてしまった筆者である・・・・・。

◆京都市立旧西陣小学校
　◎設計：京都市営繕課
　◎施工：不詳
　◎竣工：昭和11(1936)年
　◎構造：鉄筋コンクリート造3階建て
　◎所在地：京都市上京区立売通大宮東入ル幸有町689
建物デザインはモダニズム風。しかし柱が多く設けられた耐震面に考慮した設計がされている。
校門脇に建つ事務棟。同じ時期に建てられたもののよう。



★京都市立旧六原小学校(昭和6年築)

空也上人像や平清盛像でお馴染みの六原羅密寺の隣に建つ番組小学校。訪問時、外壁タイルが剥離・落下し、関係者による実況見分がおこなわれていた。************************************************************
★撮影・・・・・・2012年2月