京都市立旧立誠小学校(昭和モダン建築探訪)

◆旧京都市立立誠小学校
　　・・・・・京都四条・高瀬川沿いに建つ昭和3年竣工の旧小学校舎


　今年の2月の下旬より始めさせていただいた京都の建築探訪記は、取りあえず今回で最終回。この時の京都滞在は一日のみだった事もあり、訪問出来た歴史的建造物はごく僅かだったが、その中でどうしても見たかったのが、京都市内各地域に残る戦前に建てられた鉄筋コンクリート製の小学校舎であった。

　その理由は年が明けてすぐの事になるだろうか、東京都中央区立明石小学校・旧校舎(大正15年築、平成22年解体)の保存運動をされていたLさんから頂いたメールが切っ掛けだった。このLさん、その数日前に行った京都旅行の際、旧六条院小と清水小という二つの戦前築の小学校舎を見学されたとの事で、その報告を京都行きの直前に頂いたのである。

　そういう事で私もこの時の京都訪問で、幾つかの戦前築の鉄筋コンクリート製校舎を見学予定リストに入れる事にした。しかし京都市内を巡っているうちに、冬場という事もありあっと言う間に日が暮れてしまい、予定していた小学校舎の殆どを見学できずに終わってしまった。そのような中で唯一撮影できたのが、下京区にある旧京都市立立誠小学校(昭和3年築)である。

　この旧立誠小学校は、京都の繁華街・四条河原町より高瀬川を北上し、歩いて数分の場所にあった。四条北側の高瀬川沿いというと、いわゆる夜の歓楽街として知られる地域だが、そのような場所にぽつりと昭和3年竣工の鉄筋コンクリート製校舎は建っていた。なお立誠小学校は戦後この周辺が商業地域となり児童数が減少したため、近隣の小学校と統廃合。訪問時、正門扉は固く閉められていたが、現在この小学校の校舎は地域のコミュニティー施設として使われているようである。

　また昭和戦前に建てられた京都の市立小学校舎と言うと、いわゆる旦那衆たちが結成した町組織の多額の寄付により、その地域ごとの小学校舎の建設資金が賄われたという。この立誠小学校も四条河原町や先斗町と言った地域に近いこともあり、地元の旦那衆たちがこぞって寄付をおこない建設されたのではないかと想像される。
　ちなみにこの小学校設計は、京都市の営繕課によりおこなわれたとのこと。これは私の勝手な想像だが、建設資金の寄付をした町の人々は市の営繕課職員たちに、小学校建設に関するリクエストを色々と出していたのではないかと考えられる。和風アールデコとも呼びたくなる建物各所の意匠を見ていると、地元の人たちの他の地域には負けたくないという拘りのようなものを感じてしまった私であった。

　今年3月11日に起きた東北・太平洋沖大震災により、歴史ある戦前築の鉄筋コンクリート製小学校舎の保存については、この先ますます難しくなりそうな気配である。しかし地域の歴史と共に歩んできた大切な文化遺産という事も、忘れてはならない事実ではないだろうか。
　時間はかかるかも知れないが、引き続き国内各地に残る戦前築の学び舎を訪ねていきたいと思っている今日この頃である・・・・・。
◆旧京都市立立誠小学校
　◎設計：京都市営繕課
　◎施工：不詳
　◎竣工：昭和3(1928)年
　◎構造：鉄筋コンクリート造3階建て
　◎所在地：京都市下京区木屋町通蛸薬師東入ル備前島町

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★撮影・・・・・2011年1月