函館豊川町の鳥山商事(函館擬洋館コレクション、その26)

◆豊川町の鳥山商事
　・・・・・ベイエリアのすぐそばに建つ推定築75年のいかした洋館


　今回紹介するこの洋館は、前回の高田屋嘉兵衛資料館より程近い豊川町にある水産卸売会社の事務所。筆者は以前この洋館を何度か見た事はあったが、ここ数年その存在をすっかり忘れてしまっていたという建物であった。
　しかし先月jhm-in-hakodateさんのブログでその存在を思い出し、先月の函館訪問時の帰りぎわ撮影したのが今回ご覧頂いている写真という訳だ。久しぶりに見る鳥山商事、小振りな建物ではあるが夕日に照らされ、なかなか凛々しく筆者の目には映った。

　さて函館には2階は洋風の下見板が張られ、1階が和風町屋風の擬洋風民家が数多く現存しているが、この鳥山商事もその部類に入る造りの建物。
　正確な竣工年数は判明していないが、この地域は昭和9年3月の大火で全焼した場所なので、恐らくそれ以降に建てられたものと考えていいだろう。

　またこの時代函館で建てられた擬洋風民家の特徴としては、明治から大正期に建てられた上げ下げ窓や両開き窓に対し、出窓のスタイルを用いているパターンが多いのだが、こちらもその手法が用いられている。
　但し末広町のバス通り沿いに建つ、日下部家住宅洋館のように豪華絢爛な作りではなく、割とシンプルな感じで纏まっているのが特徴として挙げられる。なおこの鳥山商事のようなシンプルな形式の擬洋風民家も、函館の町を歩いているとちょくちょく見かけるので、その当時はかなり普及したスタイルだったと推測される。

　なお鳥山商事の数軒隣には、昭和9年大火後に建てられたという和風民家も建っている。この和風民家も以前は海産問屋だったという建物で、洋風の鳥山商事に対してまた違った趣を醸し出しているので、この辺りを訪れた際にはこちらの建物も併せてご覧いただきたい。
　函館の一大観光スポットであるベイエリアの赤煉瓦倉庫群のすぐそばに、しっかりと生き続けている名の知れぬ歴史的建造物の数々。このような建物こそに、真の函館の魅力が凝縮されているような気がしてならない。しかしガイドブックに載らない無名の歴史的建造物の多くは、徐々に人知れず姿を消しているのが今の函館の現状である・・・・・。

◆鳥山商事
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工：昭和9(1934)年以降
　◎構造：木造2階建て
　◎所在地：函館市豊川町9-22

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★豊川町のS家住宅　　
建物一面に張られた出絡窓は圧巻だ。

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★撮影・・・・・2010年4月