函館東浜の旧平和石油事務所(函館擬洋館コレクション、その24)

◆旧平和石油事務所
　　・・・・函館東浜の栄枯盛衰を見てきた明治40年築の木造洋館


　今回は約1カ月振りに函館の建築紹介をさせていただきたい。
　1ヶ月近くもブランクが空いてしまったのは、函館に嫌気がさしたという事ではなく、今まで撮りためた写真が底をついてしまったという簡単な理由。そういう事で先週末の金曜と土曜の二日間約半年振りに函館を訪ね、何軒かの歴史的建造物を見学・撮影してきた訳である。
　函館に滞在した二日間、天気があまり芳しくなかったので少し重苦しい写真だらけになってしまったが、この先数ヶ月間は今回訪問時に撮影した写真を中心に函館の建築紹介をおこなっていきたいと思う。

　そういう事で今回取り上げるのは、東浜桟橋のすぐそばに建つ水色のペンキが塗られた木造洋館。観光施設が集まるベイエリアからも近いこともあり、こちらの建物に見憶えがある方もいらっしゃるかも知れない。
　なお、つい最近までこのすぐそばから発着する観光遊覧船の事務所として使われていた。なお明治40年竣工の木造洋館どのような人物が建てたかは謎だが、北洋漁業の拠点であった東浜桟橋に近いことを考えると、海産・海漕関連の商店などとして使われていたと考えていいだろう。また昭和30年代ころからは平和石油の事務所、平成に入ってからは地元の魚長食品の所有になり現在に至っている。

　また建物外観は、1階部分の左側に大きな一枚ガラスが取り付けられ、2階窓が一枚物の耐寒仕様のものに取り換えられているが、もとは1階部分が和風の造り、2階は両開き式窓という函館によく見られる典型的な擬洋風タイプの商店建築だったようだ。
　そのような改修部分が目立つ建物という事もあってか、筆者はこれまでこの洋館には殆ど注目した事がなかったが、1階の右手軒下には年代物の鉄製装飾が付いているなど、築100年という歴史を感じさせてくれる箇所も幾つか見受けられた。

　なおこの擬洋館が建つ右隣には、同時期に建てられたと思われる貫緑ある民家があったが、今から9年前の日和坂下のホテル建設に伴う再開発のため解体。現在では左手にある旧金森船具店とこの擬洋館だけが、北洋漁業が華やかしころの東浜の賑わいを知る建物になってしまっている・・・・。
◆旧平和石油事務所
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工：明治40(1907)年
　◎構造：木造2階建て
　◎所在地：函館市末広町22-16
　　❖1993年：函館市歴史的景観賞受賞
左に写るのは旧金森船具店。こちらが本文中で紹介した鉄製の装飾。この建物の歴史を物語る箇所の一つ。
東浜を望む。かつてこの浜は北洋漁業の拠点として賑わっていた。*********************************************************
★参考文献・・・・・「建築の彩時記　港町・函館こすり出し」元町倶楽部編、1990年、INAXギャラリー刊
★撮影・・・・・2010年4月