函館船場の擬洋風民家(函館擬洋館コレクション、その22)

◆旧市水商会、守屋家住宅
　 ・・・・・金森倉庫の裏手にある明治40年代竣工の2軒の擬洋風民家


　今回取り上げさせていただくのは、前回のラコンチャ(旧深谷米穀店)の右隣に建つ2軒の擬洋風民家。
　以前にも何度か紹介してきたように、この界隈は昭和の半ばまで船場町と呼ばれていた土地で、その名の通り海産関連の問屋が多くあったという場所。そういう土地柄を踏まえると、恐らくこの2軒の民家もそれに関連した商店兼住居として建てられたものと考えられる。

　旧船場の2軒の擬洋風民家は、この通りの両隣に建つ和雑貨いろは(明治41年築)とラコンチャ(旧深谷米穀店、大正10年築)の陰に隠れてしまっているが、ともに明治40年の大火直後に建てられたもの。つまり築100年を過ぎた函館でも古い類に入る歴史的建造物である。

　またこの2軒の民家も函館によく見られる典型的な擬洋風のスタイルだが、他の同系統の建物と比較すると割と小振りなのが特徴としてあげられる。
　しかも道路に面して綺麗に建っているのではなく、これらの建物が段違いの状態で並んでいるのが面白い。これに関しては、この建物の裏側にある金森倉庫とこの民家の前を通る道路が並行ではなく、〔和雑貨いろは〕のある南東方面に向かって徐々に狭くなるという立地が大きな要因だと考えられるが、函館市内ではあまり見かけない不思議な建物の並び方だ。恐らくそのような立地のため、函館の擬洋風民家によく見られる二軒長屋のスタイルではなく、このような小規模な民家が建てられたのだろう。

　なお冒頭の写真でご覧いただいた薄緑の建物は、函館市の伝統建造物に指定されているが、右側のピンク色の建物は市の景観形成や伝統的建造物などの指定対象外。
　これも既に何回も紹介してきたように函館には、無名の歴史的建造物が数多く現存している。今回紹介したピンク色の民家や多くの古民家群も、函館の町並みを彩る貴重な存在としてその価値を認められていい筈だ・・・・。
◆旧市水商会(現Lサイズの店もりや)
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工：明治42(1909)年
　◎構造：木造2階建て
　◎所在地：函館市末広町14
　　 ❖函館市指定伝統的建造物

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◆守屋家住宅
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工：明治42(1909)年
　◎構造：木造2階建て
　◎所在地：函館市末広町14
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★撮影・・・・2009年6月・10月
★参考・・・・・「港町・函館こすり出し　建築の彩時記」　元町倶楽部編、1990年、INAXギャラリー刊