東京都新宿区立津久戸小学校(昭和モダン建築探訪)

◆東京飯田橋の津久戸小学校
　 ・・・・飯田橋にある昭和8年竣工のモダニズム小学校


　今回紹介する新宿区立津久戸小学校は、JRや地下鉄の飯田橋駅から徒歩3分程度の場所にあるもの。この周辺には近年建てられたと思わしき中規模のビルディングが多く見かけられるが、白い外壁のこの小学校舎だけは過密する東京の街並みとは別世界のような雰囲気を漂わせている。
　一見すると何の変哲もない、どこにでもありそうな普通の小学校舎と言った感じの津久戸小。その外観からは少し想像が付かないが、昭和8年竣工の今年で築76年を迎える歴史的建造物である。

　恥ずかしながら、筆者が津久戸小がこんなに古い建物だと気付いたのはつい最近のことである。今年の春、finchesさんから津久戸小の存在を伺い、それから間もなく筆者はこの小学校を一度訪れている。しかし戦前築の建物らしからぬモダンなその外観を見て、戦後に建てられたものだろうと勝手に結論付け、その場を後にしてしまった。
　だがその後、図書館で〔建築の東京、昭和10年発行〕という本を閲覧していたところ、竣工当初の津久戸小学校の写真を発見し、ようやくこの小学校がとても古い建物だと確認した訳である。

　津久戸小のデザインは装飾的要素が排除された、この頃国内で大流行していた〔インターナショナルデザイン〕を基調としたもの。時代の変遷とともに多くの改修がおこなわれ竣工当初からの面影を残す箇所は少ないものの、大久保通り沿いに設けられている横長のカーテンウォールや、玄関近くのガラス張りの階段室などに往時の輝きが偲ばれる。

　ちなみにこの小学校、近年改修がおこなわれている。そのコンセプトは『歴史と伝統　木の温もりに包まれた津久戸小学校』とのことで、校舎内の各室を木調の部屋に模様替えしたとのことだ。なおそちらの様子は同校のホームページを参照していただきたいが、昭和初期のモダニズム風の外観と木調の校内という組み合わせも新鮮で面白い。
　そして何よりもこの改修で価値があるのは、既存の校舎を壊さなかったということに尽きるだろう。函館市にも新宿区のような理解ある行政関係者がいたなら、弥生小学校の解体も避けられたに違いない・・・・。
◆新宿区立津久戸小学校(旧東京市立津久戸尋常小学校)
　◎設計：東京市
　◎施工：大倉土木
　◎竣工：昭和8(1933)年10月
　◎構造：鉄筋コンクリート造り3階建て
　◎所在地：東京都新宿区津久戸町2-2

※この建物は現役の教育施設として使われています。見学に際してはご配慮お願いいたします。
★竣工当初の津久戸小学校

❖「建築の東京」　都市美協会発行、昭和10年
玄関脇の階段室。窓枠はアルミ製に取り換えられているが、竣工当時のモダンさが伺える箇所。
飯田橋駅前の陸橋より。********************************************************
★撮影・・・・2009年11月