函館末広町電車通り沿いの擬洋風民家(函館擬洋館コレクション、その18)

◆末広町市電通りの擬洋風住宅
　・・・・ちょっと個性的な大正10年、昭和9年竣工の2軒の木造民家


　本日紹介する建物は末広町の市電通り、大三坂下にある2軒の擬洋風民家。

　今回この2軒の民家を紹介するにあたり過去の写真をチェックしてみたが、どういう訳だがこれといった写真が見当たらない。自分の記憶の中では函館を訪れるたび、これらの建物を撮影してつもりでいたのだが。

　恐らくこの向かいに建つヱビス商会や旧リューリ商会、またここから数10メートル離れた場所にある関根要太郎の設計作品・函館海産商同業組合事務所やイチヤマ商店ばかりに気がいっていたのかも知れない。今回は限られた写真のみだが、末広町市電通りを彩る名建築を紹介していきたい。

　そういう事で最初に紹介させていただくのが、外壁の白と深緑の塗装が美しい白井家住宅である。函館市教育委員会作成の市指定伝統建造物一覧によると、昭和9年竣工にしたものだという。
　比較的小規模な造りのこの住宅だが、2階・1階の出窓になっているスタイルなどは、筆者が以前から唱えている〔函館擬洋風民家進化論？〕の昭和初期型に該当するもの。また現在外壁の色は、神戸の木造洋館(異人館)などによく用いられている白をメインに窓枠や階の間などを深緑の色で縁取る塗装が施されているが、当時の函館の時勢を考えると深緑や紺など濃い色が塗られていた可能性も考えられる。

　現在末広町の市電通り沿いには、戦前築の歴史的建造物が多く現存しているが、木造下見板張りの住宅というのはこの白井家宅のみである。なお住宅兼店舗だったという可能性も考えられるが、建物の規模を見ると住宅専用のものとして建てられたものと推測される。
　また数枚の写真を紹介したあと、この隣に建つもう1軒の住宅を紹介させていただきたい。

◆白井家住宅
　◎設計：不詳
　◎施工：不詳
　◎竣工：昭和9(1934)年
　◎構造：木造2階建て
　◎所在地：函館市末広町23-1
　　❖函館市指定伝統的建造物

出窓は昭和以降の函館木造下見板張りの洋館に、よく用いられた手法だ。-------------------------------------------------------------------------
★佐藤家住宅

　先の白井家住宅の隣に建つ佐藤家住宅は、 大正10年4月の函館大火直後に建てられたもの。寄棟式の屋根などは函館によく見られるスタイルだが、この建物の最大の特徴は外壁に塗られたモルタルである。

　以前にも紹介したように大正10年大火後、函館では政財界の有力者が中心となって〔函館火防実行会〕を結成。その後市内には耐火素材であるコンクリート建築が数多く建設されたが、この大火の直後には一部の技術者から準防火建築とも言える外壁モルタル塗りの手法も紹介されている。
　但し現存する建物を見る限りでは、モルタル塗りの手法は函館の住宅建築には殆ど普及しなかったようだが、そのような事を考えると当時の函館においてとても実験的な住宅だったと考えられる。当時この住宅を建てた地元棟梁の必死さが現代に伝わってくるような力作である。

◆佐藤家住宅
　◎設計：不詳　
　◎施工：不詳
　◎竣工：大正10(1921)年
　◎構造：木造モルタル塗り2階建て
　◎所在地：函館市末広町23-25
　　❖函館市指定伝統建造物

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★なお今回紹介した2軒の建物は一般の住宅として使われています。見学に際してはご配慮お願いします。
★撮影・・・・・2009年10月