東京・自由学園明日館(大正モダン建築探訪)

◆自由学園明日館
　・・・・・アメリカ人建築家：フランク・ロイド・ライトが遺した大正建築の傑作


　東京・自由学園。その象徴ともいえるのが、西池袋にある旧本校舎・明日館(みょうにちかん)である。
　設計は20世紀を代表するアメリカ人建築家：フランク・ロイド・ライト(Flank Lloyd Wright 1867～1959)と、弟子の遠藤新(1889～1952)による。

　自由学園は羽仁吉一・もと子夫妻により、大正10(1921)年に創立された女学校。夫妻は明治末に『婦人の友』を創刊し、キリスト教に基づいた婦人運動、そして子女教育の充実を図るため豊島の地に自由学園を開設させた。
　またライトが校舎設計を引き受けたいきさつは、弟子の遠藤新が羽仁夫妻にライトを紹介。ライトは羽仁夫妻の教育理念に共感し、当時東京日比谷に建設中だった帝国ホテルとともに自由学園の設計を受け持つことになったという。

　なお学校建設に関しては予算が限られていたこともあり、構造は木造モルタル塗りの簡素な造りになっている。しかしながら予算は少なくても、心豊かな空間を作れるということを、この建物は教えてくれる。またライトは『貧富の別なく人間は豊かな住生活が保証されるべき』という信条を持っていたというが、その言葉がまさに当てはまるような作品だ。
　ライトの建築スタイルは大正末より国内でもブームを起こすことになるが、大正デモクラシーという時代背景から考えても、ライトが自由学園を設計した経緯やその精神性は、また別の輝きを見せてくれる。

　この明日館、老朽化のため一時期は解体も検討されたというが、今から10年ほど前に大規模な改修工事を実施し、2001年から一般公開の運びとなった。
　また多くの人にこの建物に親しんで貰おうという学校側の方針により、一般見学のほかにも部屋の貸出も実施。土日などは結婚式場として使われているが、多くの見学者が建物内を見学できないことに配慮し、月に一回ペースで休日の見学会を催しているのも嬉しい。そのような学校側の姿勢も、この建物に多くの人たちが魅せられる理由の一つではないかと思う。

　小難しい空間論は抜きにして、皆を幸せな気分にさせてくれるライトが日本に遺した傑作。機会があれば、ぜひ一度訪れていただきたいものである。

◆自由学園明日館
　◎設計：フランク・ロイド・ライト(Flank Lloyd Wright)、遠藤新
　◎施工：女良工務店
　◎竣工：大正10(1921)年～大正14(1925)年
　◎構造：木造モルタル塗り平屋、一部2階建て
　◎所在地：東京都豊島区西池袋2-31
　　❖国指定重要文化財

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★参考・・・・自由学園ホームページ
★撮影・・・・2009年4月・7月・9月