東京都港区立高輪台小学校(昭和モダン建築探訪)

◆港区の高輪台小学校
　　・・・・・改修により新たな命を与えられた昭和10年竣工の小学校


　本日紹介するのは、東京港区の高輪台小学校。以前に何度か冒頭の写真を発表しているので、このピカピカの建物をご記憶されている方もいらっしゃるかも知れない。
　何の基礎知識もなければ、最近新築されたものだと誰もが信じてしまいそうな白亜のモダン校舎だが、実は昭和10(1935)年に竣工したもの。つまり今年で築74年を迎える歴史ある校舎なのである。

　以前に紹介してきたように、東京・横浜では大正12(1923)年の関東大震災を機に、都市計画の一環として不燃・耐震を目的とした鉄筋コンクリート製の小学校校舎を数多く建設した。
　当初は震災後に起きた火災により被害を受けた地域を中心に、コンクリート製の校舎は建てられていくのだが、東京の復興事業が終了した昭和5(1930)年以降には、震災後に起きた火災の被害をあまり受けなかった山の手地域などにも、このようなコンクリート製校舎が徐々に建設されていく。そのような時期に建設された小学校のひとつが、この高輪台小学校だった。

　またこの校舎デザイン最大の売りは、〔インターナショナルデザイン〕という外壁を無装飾にし、かつガラス面を大きめにとる当時最先端のモダンスタイルが取り入れられていること。
　また当時の小学校は、火災発生時の緊急避難所を考慮してコの字型かL字型の形状に建てられるものが殆どだったが、高輪台小学校は恐らく周辺の地形を考慮してかFの字に近い形状で校舎が建てられている。写真と頼りない説明だけでは分かりづらいかも知れないが、外観・校舎の形状ともに当時としては超モダンな小学校舎だった訳である。

　またこの校舎は平成15(2003)年から2年に渡り、耐震補強やエレベーターの設置など大規模な改修工事が実施されている。
　今から10年くらい前に一度この校舎を見たことがあったが、窓枠や変えられていたり外壁が綺麗になっていた事もあり、以前とは少し違った印象も受けたが、竣工当時の形をほぼ維持した改修がおこなわれたようだ。また建て替えや外壁の一部保存ではなく、既存の校舎をきちんと再生したものが現在見られる校舎とのことだ。

　残念ながらこの校舎内を見学する機会には恵まれていないので、すべてを結論づけられないが、歴史ある教育施設をこのような形で甦らさせることも可能だということを示してくれたのが、この高輪台小学校の改修ではないだろうか・・・・・？。
　
◆東京都港区立高輪台小学校(旧高輪台尋常小学校)
　◎設計：東京市
　◎施工：上遠喜三郎
　◎竣工：昭和10(1935)年3月
　◎改修：平成15(2003)年～平成17(2005)年
　◎構造：鉄筋コンクリート造り3階建て
　◎所在地：東京都港区高輪台2-8-24
　　❖東京都選定歴史的建造物

❖なおこの建物は現役の教育施設として使われています。見学に際してはご配慮お願いいたします。
★竣工まもなくの高輪台小学校

※図版・・・・「芝区誌」　東京市芝区編纂、昭和13年発行より数年前の改修工事では、ご覧のようなエレベーターも設置されている。
古い建物でも、このように最新の設備との共存だって可能な訳である・・・・・。

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★撮影・・・・2009年4月・6月
※なおこの小学校は関東大震災後の復興事業終了後に竣工したものですが、戦前築の鉄筋コンクリート製小学校ということで〔復興小学校〕のカテゴリーに入れさせていただきました。ご了承ください。