東京都文京区立元町公園、旧元町小学校(昭和モダン建築探訪)

◆文京区立元町公園、旧元町小学校
　　・・・・・地形と共生する昭和初期竣工の復興公園と小学校舎

　本日紹介させていただくのは、東京文京区にある区立元町公園(昭和5年竣工)と、この公園に隣接する旧元町小学校(昭和3年ころ築)。

　この元町公園は、JRの中央線や総武線の水道橋駅からお茶の水駅の中間くらいの場所にあり、電車に乗っていると高台に建つ昭和第一高校(設計・施工：木田保造)と、この公園がほんの一瞬ではあるが連続して見ることができる。

　今の季節は公園の木々の葉が鬱蒼と生い茂り公園の全体像は少し見づらいが、斜面を利用した公園入り口の階段は季節を通してよく見える。この階段を見れば元町公園が、最近建てられた施設とはまた違った存在感があると感じていただけるのではないかと思う。

　当ブログでは、東京に建てられた戦前築の小学校舎をこれまで何軒か取り上げてきたが、この元町公園と旧小学校も、大正12(1923)年の関東大震災後の復興事業の一環として設置された施設だ。

　なお関東大震災後、東京市復興局は不燃素材である鉄筋コンクリート製の小学校舎の建設と同時に、隣接する土地に児童の遊び場や緊急災害時の避難場所などの目的とした小公園を設置。東京市内各所にバラエティーに富んだデザインの小公園施設が設置されたというが、時代の流れとともにその殆どは取り壊され、現在は公園だけが残っているものが大多数だという。その中で竣工当時の面影を残しているのが、この元町公園とのことだ。

　この元町公園の素晴らしさは、傾斜地という地形を生かした設計の妙に尽きると常々私は考えている。
　公園入り口の階段を上ると、それが二手に分かれ、その両脇にはバーゴラ(露壇)が置かれ、その眼下には神田川の緑が見渡せることができ、更にその先を上ると小広場へと辿りつく。そして小広場と隣接する形で元町小学校が建っているという構造。また西側の小広場へと上る階段には、冒頭の写真でご覧いただいた水階段が置かれているなど、公園の小ささの割には非常な広がりを感じる空間だ。

　最近元町公園を訪れるたび、同じく傾斜を活かして建設された函館市立弥生小学校と、相通じる何かを感じてしまったりもする。今のように土木技術が発達していなかった時代だからこそ、自然や周辺の地形・環境にあわせた設計が両者にはおこなわれ、そのことが人々の心を癒しているのではないかとも思ったりもした・・・・。

◆文京区立元町公園
　　◎設計：東京市
　　◎施工：不詳
　　◎竣工：昭和5(1930)年
　　◎所在地：東京都文京区本郷1-1

公園入り口の階段は二手に分かれ、その両脇にはバーゴラが置かれている。

こちらはバーゴラより撮影したもの。公園の眼下には神田川(外堀)と中央線が走る。

そして公園左側を進むと水階段が。ここを上ると平坦な広場がある。

公園の小広場に隣接して建つのが旧元町小学校。こちらは公園より一足先に建てられたもの。

--------------------------------------------------------------------------
★元町公園に隣接する旧元町小学校
◆文京区立旧元町小学校
　　◎設計：東京市
　　◎施工：芝江初五郎
　　◎竣工：昭和2(1927)年12月25日
　　◎構造：鉄筋コンクリート造り3階建て
　　◎所在地：東京都文京区本郷1

ここ数年は空家のままの小学校。
公園とともに後世に残して欲しい貴重な街の文化遺産である。
*********************************************************★参考文献・・・・「東京人」2007年10月号、〔特集　後藤新平〕
　　　　　　　　　「分離派建築博物館ホームページ」ほか
★撮影・・・・・2009年2月・5月