東京都台東区立旧坂本小学校(大正モダン建築探訪)

◆東京上野の旧坂本小学校
　・・・・学校閉校後、区の施設として再生された大正モダンな小学校校舎


　私ごとだが、このところ東京に戦前建てられた小学校建築巡りに凝っている。

　以前にも紹介させていただいたが、これらは〔復興小学校〕という、大正12(1923)年の関東大震災後に数多く建設された鉄筋コンクリート製の学校建築群。なお都内には、その当時に建てられた校舎が数多く現存し、またそれらは築80年以上経った今も数多くが現役の校舎として使われている。

　正直なところ、以前は復興小学校についてあまり関心を持っていなかったのだが、昨年から問題になった函館市立弥生小学校の解体問題を機に、自らが住む東京に残る文化遺産の偉大さに気づかされたような気がする。以前はどれも似たようなものだと思っていた校舎群は、じっくりと見るとどれも個性的で、それらの殆どが地元の人々から町の宝として大事に使われていることも痛感した。

　そういう事で今回紹介するのは、先日訪ねたばかりの東京台東区立旧坂本小学校。場所的にいうと上野公園や寛永寺のある上野の山を下った、言問通りという幹線通り沿いに建つ小学校である。
　少し騒々しい言問通りだが、その脇の小道を入ると冒頭の写真でご覧いただいた、小学校の玄関部分が姿を現す。なお写真中央のパラボラ状の階段室や、楕円状になっている玄関部分は、その当時日本で流行していた表現派と言われるモダンデザインが用いられている。当時も今もなかなかお洒落で個性的なデザインの校舎だ。

　なおこの校舎は大正15(1926)年、入谷尋常小学校の関東大震災後の復興校舎として建てられたもの。また平成8(1996)年に小学校は閉校になったが、現在は区の施設として第二の活路を見出している。今回は少し中を覗かせていただいたが、校庭では少年サッカーの練習、体育館では体操教室がおこなわれていた。また2階は上野タウンミュージアム、1階は児童クラブとして使われているという。また教室の何部屋も灯りが付けられていたので、この他にも様々な用途で活用されているようだ。
　ちなみにこのときは昼過ぎに訪問したこともあってか、放課後の学校のような賑やかな雰囲気。小学校としての役目は終えたが、この校舎は町のコミュニティーとしてきちんと活用され、人々の生活の一部となっている印象を受けた。

　ちなみに台東区内には、以前紹介させていただいた旧小島小学校をはじめ、閉校になった小学校の校舎を民間の施設や区の施設して再生させているものも多く存在する。閉校になった校舎を解体して、新たな施設を作ることだって可能なのだろうが、台東区は築80年前後の校舎を保存する方針をとっているようだ。
　最後に余談になってしまうが、小学校が閉校になったあと、海洋施設の建設と称し早々と築70年の歴史ある校舎を解体した割には、その更地を長年にわたり放置している北のとある街にも、台東区のこういうところを見習って頂きたいのだが・・・・。

◆台東区立旧坂本小学校(旧入谷尋常小学校)
　　◎設計：東京市
　　◎施工：長谷川精二郎
　　◎竣工：大正15(1926)年11月15日
　　◎構造：鉄筋コンクリート造り3階建て
　　◎所在地：東京都台東区入谷1-12

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★撮影・・・・2009年4月・6月