by ヨウタロウ研究員 カテゴリ
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・・・・・昭和3年竣工、今秋特別公開された遠藤新設計による葉山のモダン住宅 先週末、普段の休日より少し早起きして、電車とバスを乗り継ぎ向かったのは神奈川県の葉山町。葉山は皇室の御用邸とマリーナがある事で知られる町であるが、海の見える穏やかで美しい土地という事もあり、古くからの別荘地としても知られる場所である。 今回葉山を訪ねたのは、昭和初期に建てられた別荘・旧加地利夫別邸を見学するためである。この加地別邸、10月・11月の土日祝日のみ特別公開されているそうで、期間限定や事前予約というのに無頓着な筆者も、この邸宅見たさに葉山まで出かけた次第である。 その旧加地利夫別邸の特別公開は、この邸宅の保存を訴える会により催されたもの。またユニークなのは、[加地邸をひらく 継承をめざして]というタイトルの、この邸宅の素晴らしさを堪能して貰おうという目的の、展覧会方式でおこなわれたという事である。 また旧加地邸、長年手入れがされていなかったようで、痛みが激しい箇所も幾つか見られたが、保存会の方々の熱意ある清掃の甲斐もあってか、竣工当時の美しさを想像できる邸内を見ることが出来た。手作り感満載のアットホームな邸宅公開は、とても好感を持てるものであった。そして筆者の訪れたこの日も、多くの来訪者で賑わっていた。 さて何故多くの人が、旧加地利夫別邸に関心を持ったかと言うと、やはりこの邸宅を建てた建築家の存在が大きかったと筆者は想像する。その建築家の名は、遠藤新(1889~1951)。遠藤は筆者が説明するのでもなく、 東京帝国ホテル(大正12年築)建設のために来日した、近代建築の巨匠フランク・ロイド・ライト(Frank Lloyd Wright、1867~1959)に師事。その後、ライトの教えをもとに、日本の風土に合わせた傑作を次々と発表していく。 その初期作が加地邸だった訳であるが、書籍で以前からその存在は知られていたものの、個人の所有という事もあり長年に渡り非公開だった。それが今秋、はじめての一般公開された事もあり、多くの人々の注目を集めたのだろう。 そしてこの加地邸、別邸と言うこともあり規模的には小さいものだが、ライトや遠藤新の建築が好きな人にとっては、至福とも言える素晴らしい空間が広がっていた。 例えば坂の傾斜を生かした、南面の大谷石を多用した玄関付近の柱の作りは、兵庫芦屋の旧山邑太左衛門別邸(大正13年築)を彷彿させるもの。また玄関上のバーコラの付いた展望塔は、東京池袋の自由学園講堂(昭和2年築)を連想させる。 また邸内は神奈川藤沢の旧近藤賢二別邸(大正14年築)と同様、セカンドハウスという事もあってか比較的シンプルな作り。それでもライトの高弟である遠藤の作品らしく、ライト風の調度品、家具を使った美しい室内が演出されている。個人的に気に入ったのが、中二階から見下ろすことが出来る自由学園明日館(東京、大正10年築)の食堂をを小さくしたような居間と、遥か遠くに相模湾を望むことができる展望台。これは本当に素晴らしかった。 今回室内の撮影はNGという事で写真はお見せ出来ないが、当時三井物産に務めていた家主の加地もこの葉山の家をいたく気に入ったのだろう。東京白金の本邸の設計も遠藤に依頼し、昭和6年に竣工させている。 ライトの高弟である遠藤新設計の美しい旧加地邸。この邸宅の特別公開は今月末で終わってしまうが、近い将来一般公開される日が来るのを、祈ってやまない。失くすのは勿体ない、葉山の海が見える素敵なモダン邸宅であった・・・・・・。 ◎設計:遠藤新 ◎施工:不詳 ◎竣工:昭和3(1928)年 ◎構造:木造モルタル塗2階建て ◎所在地:神奈川県三浦郡葉山町一色 ★参考文献・・・・・・「加地邸をひらく 継承をめざして」加地邸保存の会、2014年10月 ★撮影・・・・・2014年11月
by sy-f_ha-ys
| 2014-11-22 06:22
| ◆昭和モダン建築探訪
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Comments(4)
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ayrton_7 at 2014-11-24 16:38
NHKドラマ『ロング・グッドバイ』でライト設計のヨドコウ迎賓館が使われていましたね。
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sy-f_ha-ys at 2014-11-24 21:46
ayrton_7さま、私はそのドラマは見れませんでしたが、
ヨドコウ迎賓館も、やはりライト作品の東京自由学園と同様に、 ロケで使われるようになったようですね。 ヨドコウ迎賓館、現在は館内撮影もOKなので、 機会があればぜひご訪問下さい。
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ayrton_7 at 2014-11-24 23:05
そういえば、最近見ていたドラマで、東京自由学園が幼稚園という設定で出ていて驚きました。
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sy-f_ha-ys at 2014-11-25 19:51
ayrton_7さま、自由学園は一般見学のほか、教室の貸し出し、結婚式、パーティー、テレビのロケ等色々な用途で使われています。歴史的建造物の再生活用を考えると、本当に百点満点以上の評価をしてあげたい物件ですよね。
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